第47話 この俺様を誰だと思っていやがるっ!



 そうと決まれば早速実行あるのみである。


 やはりここで色々考えてしまう奴は所詮三流でしかない。


 実行へ移すまでのスピードもまた、この俺様の知能が高い証拠なのであると改めて思う。


「しかし、どこに行けば民家があるんだ? 暗くて全く見えないぞ。こんな事になるのであれば去年父上について行って色々と下調べをしておけば良かった……。しかし、夜というのもあってか目を凝らせば遠くの方で灯りがついているのが見えるな。そこに女がいるかどうかは分からないが酒位はあるだろうし、女が居ればこの際若ければ容姿は二の次にしておいてやろう。相手も貴族の血を引く、それも優秀な俺の血を引く子供が産まれるかもしれないのだ。それこそ大金を支払ってでも娘を差し出すだろう。これぞ正に需要と供給というヤツだな。そして俺は良い思いをして懐も温まる……俺の知能の高さが自分でも恐ろしい。父上は俺よりもバカだから俺からすればこんな簡単な事も分からないのだろう」


 そんな事を思いながら灯りのある方へ歩いていくにつれ、それが建物の灯りではなく焚き火の灯りである事に気付く。


「くそ、どうする? 建物ではないのであれば行っても無駄足になる可能性もある。もしあそこにいる奴らが男性冒険者だけであったとして、手に入るのはせいぜい干し肉などの保存食であろう。そんな物は別荘に食い切れないほどあるし、そんな物の為にわざわざこの俺様が動くのもバカらしい。ちっ、こんな事ならば奴隷の一人でも連れて来れば良かったぜ。現地調達すれば良いと思っていたが、まさかここまで何もない場所だったとはな……いや、あそこにいるのは女か? まさかこんな所に女の冒険者がいたとはなぁ……っ。しかも見るからに一人。この俺様はどうやら運もついているようだっ!!」


 初めは灯りが焚き火の灯りと知ってかなりテンションが下がったのだが、そこにいるのが女性冒険者一人と知って俺は歩くスピードを上げていく。


 もし反抗されたとしても、こんな場所に一人でいる女冒険者など所詮平民であろう。


 貴族であるこの俺様が平民、それも女一人に後れを取るような事はまずない。


 という事は、間違いなく女を俺の別荘まで連れて来る事ができるという訳である。


「神にも愛された男、やはり俺はただものではない選ばれし人間であったのだろう……」


 そして俺は女冒険者の近くまで行くと息を潜めて後ろまで回り、手に持った岩で一気に奇襲をする。


「どりゃぁっ!!」

「え? は? きゃぁっ!? いきなり何をするんだっ!!」

「いちいち抵抗するんじゃねぇよっ!! この俺様を誰だと思っていやがるっ!!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る