第42話 まだ温いと思ってしまう



「……は? え? そ、そんな馬鹿な事が……っ!?」

「あと、女性が素手で男性を相手にするというのも、いくら傷や体力、病気等が回復したといっても流石に可哀そうだと思うだろう? だから優しい俺はナイフも持たせちゃったりして。まぁでもお前がこいつらに恨みを買うような事をしていなければ大丈夫だろう。君たちもコイツを好きなようにやっちゃって良いぞ?」

「お、お前達……俺に歯向かうとどうなるか分かっているのかっ!? またお仕置きをされたいのかっ!? ちょ、やめ……ぎゃぁぁぁあああああああっ!! 痛い痛い痛い痛い痛い痛いッ!! は、腹にナイフを刺しやがったっ!! ぎぃぃぃぃいいいっ!! やめっ、あぎゃ、おふっ、あ、謝る……あぎゃっ」


 優しい俺が女性達にナイフを持たせると、初めこそ女性達は戸惑っていたのだが、一人がオーナーの腹にナイフを刺すと、後は全員が今までの恨みを晴らすかの如く何度も何度もオーナーへナイフを振り下ろしていくではないか。


 どれくらいそうしていただろう。


 飲食店のオーナーはかなり前に死んでしまっていたが、それからも数十分は刺し続けいたので、今やオーナーの顔はぐちゃぐちゃになって原型をとどめておらず一目ではこの死体が誰であるのか分からないだろう。


 まぁ、これが数多くの人生を破壊して甘い蜜を吸ってきたツケと思えば、拷問される事無く死ぬことができたのでまだ温いと思ってしまう。


 そして彼女達はオーナーへの恨みを晴らし終えたのか、ナイフで刺す事を止めると、俺が指示をしていないにも関わらず何故か全員俺の前に集まり始め、そして膝をつき首を垂れるではないか。


「……なんの真似だ?」

「私たちを解放して下さり感謝します。しかしながら私たちには行く場所も帰る場所もありません。おそらくそういう女性を主に拉致して来たのでしょう……。中にはそういった場所を壊された者も数多くいます。勝手なお願いだとは思いますし、解放してくださっただけでも有難いことだとは重々承知の上で私たちの事を引き取ってもらえないでしょうか?」


 その行為の意味が分からず何をしているのかと聞いてみると、一人の女性がまるで殺される覚悟を決めたような表情で自分達の現状と、俺に対して望んでいる内容を話し始めるではないか。


「もし無礼だというのであれば私の首を差し上げますので、どうかそれでそのご勘弁していただければと……っ」


 そういう女性なのだが、その肩は小さく震えているのが見て取れる。


 いくら気丈に振舞い、死ぬ覚悟ができていたとしても怖いものは怖いのだろう。

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