第41話 何故か痣があったり



「ち、畜生っ!! 退けっ!!」


 そして飲食店のオーナーは俺の話を聞くや否や顔を真っ青にしてそれが真実かどうかなどどうでも良いとばかりに逃げようと俺とマリエルを押しのけて奥にある階段へ向かうではないか。


 コイツの判断は正しいだろう。


 ここで俺の話した内容が正しいかどうか今俺に確認したところでそれが正しいかどうか分からないので結局正しいかどうか分からないのであれば真っ先に逃げるというのは間違っていないだろう。


 ただ、一つ。この俺から逃げられると思っている事以外は。


「あぎゃっ!?」

「まさかここから逃げられるとでも思っているんじゃないだろうな? 逃がすわけがないだろう?」


 なのでアジトの連中を閉じ込めた方法と同じようにこの地下の部屋にも逃げられないように、事前に結界を張っていたのだが、役に立ったようである。


 その目に見えない結界に勢いよくぶつかった飲食店のオーナーは顔面からぶつけたようで、その反動のまま背中から地面に倒れ、鼻からは鼻血がダラダラと流れ落ちてくる。


「ぐぅう……っ。い、一体何が……っ!?」


 その衝撃によるダメージで軽い脳震盪を起こしてしまったのか立ち上がるもフラフラと千鳥足になり部屋の壁まで歩き手を壁について身体を支え、別の手で頭を押さえながらフルフルとかぶりを振る動作をしている。


「一体何がって、お前が逃げないように予め結界を張っていたんだよ。追いかければ直ぐに追いつくことは出来るだろうし、マーカーを付けているのでマップ機能を使えばお前の居場所など一目瞭然なのでどこに逃げようが意味ないのだが、わざわざ追いかけたり探す手間を増やすくらいならば初めから逃げないようにしておくというのは当然だろう。そしてお前はその結界に顔面から突っ込んだという訳だな」


 なので優しい俺は飲食店のオーナーへ何が起きたのか教えてやるのだが、このオーナーはわざわざ教えてあげた俺に感謝を言う訳でもなく、逃げられないと悟ったのかただただ顔色を青色から土色に変えていくだけである。


「それと、ここにいる者達の隷属契約から既に解放している。その意味が理解できるか? お前がここの奴隷達を無理やり隷属していたり、劣悪な環境で過ごさせていたり、それこそ暴行などをしたりなど、恨みを買われるような行動をしていなければ何も問題ないだろう。さらに、ここにいる者達は何故か痣があったり衰弱している者が多かった為、ちゃんと回復魔術を全員に施している」

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