第36話 もはやこのギルドは俺の物
そして俺はそう吐き捨てるとゴリラの了承を得ずに勝手に部屋から出る。
あぁ、相手の『こうしてほしい』という要求を理解できていながらそれを飲まずにこちらの要求のみを押し通す事がこんなにも気持ちよかったなんて。
どうしてもっと早く気付く事ができなかったのか。気付く事ができていれば前世ではもっと生きやすかったのかもしれない。
「ロベルト様、気分がよさそうですね」
「当たり前だ。もはやこのギルドは俺の物のようなモノだからなっ!! クハハハハハハハッ!!」
「流石っ、ロベルト様さまですっ!!」
◆ガーランド・オーガスside
まさか、あれが噂に聞くクヴィスト家の出来損ないとでもいうのか?
あれは噂に聞くほどの出来損ないではなく、むしろどちらかというと神童レベルであろう。
ランクCレベルの冒険者を同人に複数相手にして勝利するだけでもかなりのレベルだというのに、あえて殺さずに無力化するという手加減を選択するだけの実力を持っている所を見ると最低でもAランク級以上の強さを持っているとしても驚きはしない。
それと共にあの話術である。
噂通りのバカであればここまで相手の逃げ道を塞いで自分の要求を呑む事しかできないような状況に追い込む事など出来るはずが無い。
しかし、今までこれをらを『わざと』隠してきたというのであれば、その知能の高さも理解できる。
人間、自分よりも下だと思った相手には無意識の内に手を抜こうとする生き物であり、彼はそこを見逃さず、常に優位な状況を作り出しているとも言えよう。
そして俺は彼の罠にまんまと引っかかったという訳である。
彼の事は公爵家嫡男と知っていれば、初手謝罪からの賠償で話は終わっていた事だろう。
当然その後彼が提示した要求を飲まざるを得ない状況になる事も無かった筈だ。
しかしながら俺は彼の事を『そこそこ実力を付け始め、自分を過大評価して調子に乗った冒険者だと見誤ってしまい、対応を間違ってしまった。
まるで掌の上で踊らされた気分だ……いや、実際にそうなのだろう。
「……ごめんなさい、お父さん」
「いや、これに関しては父さんがアイツの実力を見抜けなかったミスだ。お前が謝る必要は無い。それに、まさかあの女もまさかお前以上に強いとは流石の父さんもビックリしたしな……。今回ばかりは相手が悪いと受け入れるしかないだろう」
そんな事を思っていると娘であるサーシャが悔しそうな表情を隠そうともせずに謝罪をしてくるではないか。
そんな娘の頭を乱暴に撫でながら『今回は相手が悪かった』と慰めるも、納得できないようで未だに悔しそうにしているのが見て分かる。
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