第35話 落ちた
「…………そういう考えもあるかと思います」
俺の問いにゴリラは苦虫を嚙み潰したような表情をしながら数秒間沈黙したあとに、まるで政治家のような回答をする。
「ほう。なるほど。これはあくまでも俺の予想なのだが、彼らは恐らく列を割り込む事が目的ではなく俺の奴隷であるマリエルを狙った行為だったのではないのか? そしてあの手慣れた感じからすると、既に味を占めて何回か繰り返している事が容易に想像できるのだが、その間ギルド側はアイツ等には冒険者登録の抹消などの対策をする訳でもなく見て見ぬふりをしていただけというのも窺えて来る。どうせ冒険者どうしのいざこざは面倒くさいから冒険者同士で解決しろだのなんだのという崇高なお考えを持っているのだろう。俺はそんな人間のクズのような考えはしたくはないがな。それに被害者は一人や二人ではないだろうし、公爵家の力があればその被害者を見つけ出すことなど容易だろう。もしギルド側が俺に圧力をかられても良いようについでに被害者を探し出しておくか。それと、どうせアイツらのアジトに行けば監禁している女性は複数人いるだろうしな」
そして俺はそこまで言うと身体を前に出し、ゴリラに自分の顔を近づけると悪人のように笑う。
「それでもまだ『そういう考えもあるかと思う』などというふざけた返事をするのか?」
「な、何が望みですか……っ」
落ちた。
所詮は自分が可愛いだけのギルドマスターだな。戦闘スキルはあるものの冒険者ギルドを運営していくだけの能力は無かったのだろう。
だからこそこんなクソガキによって簡単に追い込まれてしまう。
「時間はかかったが話が分かるギルドマスターで良かったよ。お前に求めているのは三つ。なに、簡単な事だ。今回の件は全て俺に任せてもらおう。当然被害者救済に関してもだ。そしてその件に関してはギルドが指示した鉄槌という事にしておけ。これで今まで溜まっていた冒険者たちの、この件に関する鬱憤は多少なりとも少なくなるだろう。次に俺とマリエルに新たな冒険者カードを作り、その冒険者ランクをSSSランクにしろ。最後に、お前の所の最大の闇である『見捨て依頼』を俺達に回せ。なに、簡単な事だろう。しかも万が一に俺達が依頼を失敗して死亡すればメリットしかない訳だっ!! …………断るというのであれば、どうなるのかバカでも分かると思うが、それでもいいのならば断われば良い」
「…………分かりました。ロベルト様の言う通りにさせていただきます」
「フン、初めからそう言えばいい。あと俺が公爵家嫡男と分かった瞬間に口調が変るのも気に入らないし気持ち悪い」
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