第34話 搾り取ってこその悪役
「貴様、調子に乗るのもいい加減にしろっ!!」
「それはあなた達の方です……っ」
「あぎゃっ!?」
ここまで煽るとゴリラも怒るかと思ったのだが、先にゴリラの娘が怒りの感情を抑える事ができずに腰に差していた剣を抜刀して切りかかるではないか。
しかしその剣は俺に届く前にマリエルが簡単に片手でいなした後に、そのまま娘の手を取ると流れるように地面へと叩きつけ、そして腕の関節を取る。
「これがあなた達ギルドの答えという事で受け取っても良いか?」
「……我が娘、サーシャが申し訳ない。こいつには後でそれ相応の罰を与えよると誓おう」
「あ? 何勝手に進めているんだ。駄目に決まっているだろう。こいつの罰は後ほど正式に俺から告げさせてもらおう」
「……は?」
「何を呆けているんだ? 公爵家であるクヴィスト家嫡男であり次期当主であるこの俺、ロベルト・フォン・クヴィストに剣を向けたのだ。それもこちらには何の非も無いにも関わらず『自分との価値観が違う』『態度が気にいらない』等という理由だけでだ。下手したら死んでいたかもしれない程の攻撃、これが俺でなければ切り殺されていた可能性もあるだろう」
「こ、殺そう等とは思っていないっ!! 少し脅そうとしていただけだっ!!」
「それを誰が信じる?」
「ぐっ……」
「どちらにせよ脅して自分達の意見を押し通そうとするような組織である事には違いないだろう。そんな貴様ら組織の内部で処理すると言われても今までも対応から見て信用できる訳も無いだろうが。内々で揉み消しておしまいという可能性もあるからな」
「ま、まさか貴方様が公爵家の嫡男とは知らず、数々の無礼申し訳ない……。娘の件は私の首で許して貰えないだろうか?」
「お父さんっ!?」
普通であればここらへんで矛を収めて話し合いに戻るのだろうが、ここで矛を収めてしまっては悪役として腰抜けであると言えよう。
搾り取れるものを全て、一滴たりとも残さずに搾り取ってこその悪役である。
なので俺はいくら謝罪してこようが取るもの取るまで追撃をやめるつもりはない。
「俺が公爵家の嫡男と分かった途端態度を変えるのか? 控えめに言ってゴミだな。もし俺が平民であればこのままそこの娘に切り殺されるか、お前からギルドの不手際の責任を押し付けられていたところなのだろう? そもそも事の発端は貴様らギルド職員側があのような者達を野放しにしていた事が原因であり、初めからあのような者達に厳しい態度を行ったり、争いになる前に警告なりなんなりして止めていればあのような事にはならなかった筈だ。そして俺は相手が攻撃して来たから反撃した。これは正当な理由での防衛であると言えるにも関わらずお前はまるで俺に非があるかのように話を持って行こうとした。俺の言っている事は間違っているか? 答えてみろよ」
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