第33話 糞みたいな魂胆



 そんな俺の態度にゴリラは眉を顰め、明らかに苛立ち始めるのだが、それを表に出すことなく冷静さを装っているのが分かる。


 恐らく俺のような奴は冒険者という職業柄珍しくも無いのだろう。


 故に俺のような態度を取る者には慣れているのだろうが、だからといって腹が立つかどうかは別問題である。


「賠償……賠償か。これから君の態度次第では君への罰則を軽減しようという話し合いをこれからしようと思っていたのだが、君がそのような態度をこれからも取り続けるというのであれば、予定通り正式な範疇で罰則をせざるを得ないな」

「ほう、罰則とな? それは一体どのような罰則なのか教えてくれよ。俺からすれば今ここで俺を軟禁に近い状態で閉じ込めている事自体がギルド側に罰則しなければならない事態であると思うのだがね。しかしお前は自分達ではなくこの俺に罰則をしなければならないというではないか。俺には到底理解できないし、むしろ謝罪と俺に迷惑をかけた事に対する賠償を支払うものかと思っていたんだがなぁ。教えてくれよ、その罰則とやらを」

「貴様……先程から黙って聞いていれば──」

「よせ。ここで暴れるとさらに面倒な事になりかねない」

「……分かりました……父さんっ」


 ギルドマスターはそんな俺の態度を改めなければ、このまま俺への罰則を規則に乗っ取り行うと言うではないか。


 その言葉に対して俺が煽り口調で説明を要求するとゴリラの後ろに控えていた女騎士風の女性が俺に突っかかって来るのだが、それをゴリラは止める。


 え? 父さん?


「……何がおかしい?」

「いや、問題ない。そこの女がお前の事をお父さんというのでびっくりしたのだが、普通に考えてお前のような男からあのような綺麗な女性が生まれる訳がない。であれば養子であると自分の中で整理できたので──」

「正真正銘血の繋がった実の娘だ」


 ふむ、生命の神秘というべきか、父親に似なくて良かったなと心から思ってしまう。


「……そうか」

「そうだ。……話が逸れたから戻そう。確かお前への罰則の話だったな。お前はギルドの規則である冒険者ギルド内での無益な争いを禁じるという項目を破っただけではなく、複数人の冒険者を再起不能にしてしまった。この件に関してギルド側は君に対して冒険者ギルドの規則に則り罰則を与えなければならない。そうしなければ他のルールを守っている冒険者たちに示しがつかなくなるからだ。ここまでは分かるな?」

「あぁ、よぉぉぉぉく分かるぜ? ようはギルドの不手際であり、本来ならばギルド側が俺に対して謝罪と賠償をしなければならない事を、こうして密室にギルドマスター直々に相対することにより、相手に有無を言わさずギルド側の要求を呑ませようとする糞みたいな魂胆がなぁっ」

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