第11話 気付かないふりをして、話を逸らす
さて、どうやって言い訳をしようかと考えるのだが、これと言って良さげな言い訳が思いつかないのと、何で俺は昨日の夜の事を覚えていなかったのかという後悔で頭の中がパンク寸前である。
しかし俺はスマートでカッコいい悪役令息を目指している以上、女性の裸一つでうろたえてしまうような情けない姿をマリエルに見せる事はできないのである。
「起きたか……。では早く支度をしろ。今日はとあるダンジョンへ向かうぞ」
「……かしこまりました。……ロベルト様」
本当はもっと胸を堪能したい。
本当は昨日の夜の続きをお願いしたい。
なんなら今日一日は、マリエルさえ良ければずっと自室に籠ってそういう行為をしていたい。
そういった欲望を俺は断腸の思いで断ち切って『ふーん、裸なんだ。ま、興味ないのでスルーしますけどね』といった体で何故かマリエルが裸で俺のベッドに入っていた件に付いては特に指摘することなく、昨日想定していた通り今日もあのダンジョンへ向かうのでマリエルもその準備をするように指示を出す。
……あと、万が一俺がマリエルを奴隷にしたのを良い事に、嫌がるのを無理やり押し倒していた等という事であった場合は普通に俺が罪悪感に耐えられないので、敢えてそこに話題が行かないようにしたというのもある。
「……なぁマリエル?」
「何でしょうか?」
「もし昨日の夜俺が、マリエルが俺の奴隷になった事を良いことに、性欲に任せて無理やり襲ったのならば謝罪する」
しかし、流石にそれは男として、悪役令息として以前に人としてクズなので、謝罪する。
「いえ、謝罪する必要はございません。私が、ロベルト様が寝ている時に、勝手にベッドに入っていただけですので気にしなくても大丈夫です。でも、本当に襲ってくれても良かったですのに……っ」
「……そうか」
「はい……」
そしてマリエルはそう言うと少しだけ頬を赤らめるではないか。
「……勘違いするかもしれないのであんまりそのような事は異性には言わない方が良いだろう」
俺はマリエルの言葉の意味に気付かないふりをして、話を逸らすのであった。
◆
「今まで学園をサボって何かをしていたようだが、やっと今日からまた登校するのか?」
「はい、お父様。今やらなければならない事は全て終わりましたので、今日から学園へ通おうと思います」
「そうか。これ以上不登校が続くのであれば流石に口を出そうかと思っていたのだが、それならば良いだろう。母さんもお前の事を心配していたので、話だけでもしておくようにな」
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