第12話 それはお前の勘違いだ
あれから一週間、マリエルと一緒にスフィアツリーをカンストさせ、取得できるスキルは全て取得したので旨味が無くなったあのダンジョンには用が無くなったのでそろそろサボっていた学園へと通う事にする。
そしてマリエルと共に学園へと通う為に制服に袖を通して朝食を食べに行こうとしたところで丁度お父様と廊下で遭遇し、学園へ行くのかと聞かれたのでそうだと答えると、お母様がどうやら俺が学園へ通わなくなった為に心配していたようなので声をかけるようにと言うので、この時初めて俺は両親に心配をかけてしまっていた事に気付く。
というか前世でも学校へ行かずに家を出ては何処かで時間を潰して帰って来るという行動を取り始めたら、例外を除き親であれば誰しも心配するものであろう。
その当たり前のことに俺は気を配れていなかった事に今さらながら気づかされる。
ゲームの世界、それも憧れてやまなかった悪役令息に転生して浮かれ上がっていたのだろう。
これではいつか小さな事で躓いて大きなミスをしでかしてしまう可能性もあった為、早い段階でその事に気付かせてくれたお父様には感謝しかない。
そして俺はお父様へ、そして食堂に既にいたお母様へ謝罪をした後家族そろって朝食を取り馬車で学園へと向かう。
「もし学園へ行くのが嫌なのならばこのまま馬車から降りずに家へ帰って貰っても良いぞ?」
「ふふっ」
マリエルに関しては没落してから初めて通う学園である為周囲の目や噂話が間違いなく辛い事が想定できるので、その事を考えればいくら側仕えメイド兼奴隷にしたとはいえ無理矢理通わせるのはどうかと思った為嫌なら来なくても良いと告げると、マリエルは何故か嬉しそうに笑うではないか。
「……何がおかしい?」
「いえ、普段は最低な人物を演じていますが、何だかんだで優しさを隠しきれていない所がおかしくて、そしてその優しさを感じ取れる距離に私がいる事が嬉しくてつい……。私をメイドにしても奴隷に堕としても未だに私を犯そうともしないですし……」
「…………それはお前の勘違いだ」
マリエルが嬉しそうにする理由が分からずに、その理由を聞いてみると実に幸せそうな表情で的外れな事を言うので、騙しているみたいで少しばかし心がチクリと痛む。
そもそも俺がマリエルに手を出さなかったのは『貴族以外は人間と見ていなかった』というだけであり、優しさでも何でもないクズな価値観であったからである。
しかしながら嬉しそうにそう話すマリエルに対して『手を出さないのは犬猫にそういう行為を求めていないのと同じだ』と言える訳も無く、俺はただ否定する事しか出来ない。
「はい。そういう事にしておいておきますっ」
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