第8話 私の仇を討ってくれた

 というか、そもそも俺はマリエルを拾ってから余り良い関係とは言い難い対応をしてきたと前世の記憶を思い出せた今だからこそそう思えるのだが、だからこそ何故マリエルがここまで俺に忠誠を誓えるのかが理解できないし、理解できないからこそ俺はマリエルが怖いと思ってしまう。


 人間、理解できないモノには恐怖心を抱くものであるので、これに関しては俺ではなく理解できない行動を取るマリエルが悪いと俺は思っている。


 そもそもこのマリエルなのだが、ゲームのストーリーの後半で主人公サイドに寝返り、拾ってやった恩を仇で返すかの如く主人公と一緒に俺を殺しに来るので、ハッキリ言っていつマリエルが俺に対して負の感情を抱き始めているのか分からない、というか拾ってからの対応を考えると現時点で俺に対して負の感情を抱いている可能性もあるので、それ込みで信用できないというのも恐怖心を加速させる要因になっている。


 しかしながら、だからといってここで自分の発言を取り下げたり、何を考えているのか分からないマリエルが怖いから嫌だというのは、俺の理想的な悪役令息である『スマートでカッコイイ悪役令息』とは異なるので、俺はそのままこの場でマリエルを俺の奴隷とする。


 それに、奴隷にさえしておけば首輪を付けたようなものなので、俺に対して危害を加えるような行為、それこそ寝込みを襲うような事もできないだろう。


 そういう意味であれば安心だと思う事にするのであった。



◆マリエルside



 恐らくロベルト様は無意識で私の仇を討ってくれたのだろう。


 私の家は貴族ではあったものの、両親は金遣いが荒く、そしてプライドと見栄だけは大きいという人物であった為他人から少し煽られただけで直ぐに金を使ってしまう為常に家には金が無かった。


 そのせいで多額の借金までしているにも関わらず両親の金遣いの荒さと性格は変わらず、そして遂に没落してしまったのである。


 そして私はそのまま奴隷として売られてしまう予定であったのだが、そこに現れたのがロベルト様であった。


 当時はロベルト様に買われるくらいであれば奴隷に堕ちた方が良いとさえ思っていたのだが、その場にいた両親からは『こんな不細工で出来損ないの娘なんかより俺たちを買わないか?』『そうよっ。こんな何の役にも立たない、家がこんな状態にも関わらず一銭も稼ごうとしないバカな娘なんかよりも私たちの方が貴族社会で生きて来た経験を生かせますわよっ!!』等々様々な誹謗中傷を実の娘である私とロベルト様に投げかけてきた。


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