第5話 その時の為に鍛えまくるだけ

 ではどういう悪役令息を目指すのかと言うと、やはり己が正義を貫き通すような、一匹オオカミ的な悪役令息が好ましい。


 孤軍奮闘で正義の為に戦うという高潔さはやはり男ならば誰しも一度はこういった悪役キャラには憧れるものであろう。


 所謂、悪役という皮を被ったダークヒーローである。


 そういった者に俺はなりたいと強く思う。


 折角人気ファンタジーRPGゲームの悪役キャラに転生できたのだからこの状況はまさに打ってつけである。


 何もしなくても俺は周囲からのイメージは最早マイナスであり、後はバレずに裏で善行を重ねればダークヒーローの完成である……なんか少し違う気がするのだけれども、そんな細かな事は気にしなくても良いだろう。


 そう、それこそが俺の悪役としての美学であれば良いのだ。


 最低だと思っていたキャラクターが、実は裏で誰にも評価されないにも関わらず善行をしている、実に良いではないかっ!!


 まぁ、そういうキャラクターは大抵死に際に実はめっちゃいい奴だったという事が分かるお涙頂戴展開になりがちなのだが…………あれだ、そんなフラグはブチ折ってしまえるくらい俺がゲームの知識で得た効率の良いレベルの上げ方や、育成方法を行って力を付けてしまえば何の問題もない。


 ……問題無いよね?


 まぁ、その時が来たらその時考えれば良いだろう。


 なので俺はいつか来るその時の為に鍛えまくるだけだ。


 さて、とりあえず当面の目標なのだが、ゲームとライトノベルで得た知識では俺ことロベルトはストーリー序盤で婚約者であるオリヴィアから婚約破棄、正確には主人公であるプレヴォ・ド・ドゥアーブルからされるのだが、まだ婚約破棄を言い渡されていないという事はゲームスタート前の時間軸である可能性は高い。


 これだけでもかなり俺にとっては嬉しい状況と言えよう。


 というのも、ゲーム序盤で入れるダンジョンで貰える特殊スキルの数々がかなり使えるモノばかりというか、スキルや魔術の基礎となるモノばかりなので、これが無いとストーリーを進める難易度は全く違うモノになってくる。


 このダンジョンなのだがゲーム序盤を過ぎてしまうと何故か入れなくなるので、俺は学園をサボって翌日さっそくそのダンジョンへ潜る事にするのでとりあえず周回するか。


 翌日俺は時間の許す限り、本来であれば一周しか潜る事のできないダンジョンを周回しまくっていた。


 そして分かった事がある。


 それはこの世界ではゲームの縛りが無く、自由度が跳ね上がっているという事である。


 例えばレベル上げなのだが、このゲームはレベルを一つ上げるごとに覚える事の出来るスキルや魔術が増えるのだが、能力そのものは向上しない。

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