第2話 最高ではないか
呆然と鏡の前で立っていると、ノックがされたのでとりあえず入室を許可する。
「ロベルト様、朝食の時間でございます」
「……分かった、着替え次第すぐ行こう」
「かしこまりました。」
どうやら朝食が用意された事を告げに来てくれたらしいので、着替えてから向かうと告げると、使用人はそのまま部屋の中へと入ってくると、俺が今着ている衣服を脱がし始める。
しかしながら、だからといって驚きはしない。
というのもこの身体で今まで生きて来た記憶も持っていたからである。
これはいわゆるロベルトとして産まれ、そして先程前世の記憶を思い出したという事なのだろう。
最高ではないか。
俺は、某ファンタジーRPGゲームに登場するロベルトと同じような末路を辿るつもりは毛頭ない。
もっとうまく悪役令息というモノを演じて見せようではないか。
そんな事を思っていると、着替えが終わったようで、俺はそのまま朝食を取りに食堂へと向かう。
「ロベルトよ、学園はどうだ?」
「問題ありません、お父様。この俺以外全員取るに足らない小粒です」
「ほう、それは頼もしい限りだ。さすが我が息子だな。それと、婚約者との仲はどうだ? 相手はどうやらお前と婚約破棄したいと呟いているという噂が俺の耳にまで入って来ているのだが?」
「問題ありません。もし相手が俺の事を嫌っていたとしても、公爵家である俺を裏切るような事は出来ないでしょう。しかしながら、万が一婚約破棄をしたいと言うのであれば、俺は潔くその婚約破棄を承諾いたしましょう」
「ほう、それはどうしてだ? あれほどあの女との婚約を熱望していたにもかかわらず、相手が婚約破棄をしたいと申しただけで簡単に手放すというのか?」
「はいそうです。相手が嫌だと言うのならば仕方がないでしょう。ですが、その場合は必ず婚約破棄をした事を後悔させてやりますよ」
この婚約者というのはオリヴィア・ド・ロレーヌと言い、伯爵家の娘であるのだが、その容姿は帝国の宝石と呼ばれる程美しく、そして聖女のスキルを有している女性である。
その女性こそ正に俺に相応しいと思った俺はお父様にその事を伝えると、お父様もクヴィスト家に相応しいと前々から思っていたらしく、二つ返事でオリヴィアとの婚約を進めると返してくれたのである。
結果、伯爵家が公爵家の申し出を断ることは出来なかったのか晴れて俺はオリヴィアと婚約する事ができたのである。
そんなオリヴィアとの婚約をあっさりと婚約破棄しても良いと言った俺に最初こそお父様は驚いていたのだが、俺が『その場合は後悔させてやる』と言うと納得したのか悪そうな笑みを浮かべる。
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