悪役令息に憧れていた俺、悪役令息に転生する。
Crosis@デレバレ三巻発売中
第1話 優しくしてきた結果がこれか
俺は小さい頃から『〇〇君は優しいね』と言われて生きてきた。
そう言われる事は嫌ではなくむしろ嬉しくもあったので俺は率先して他人の役に立とうとして生きてきたのだ。
その結果が保証人からの借金地獄である。
俺も連帯保証人というものの恐ろしさは知っていたつもりであったのだが、こいつなら信頼できると思って署名して判子を押した結果、男は行方をくらませて、結果俺の手元には莫大な借金だけが残った。
それでも今まで人の為になる事を率先して行い生きてきたのである。
俺がこんな状態になっていると周囲が気付けば必ず今までの恩を返してくれると、そう信じていた。
しかし、その期待も見事に裏切られ、蜘蛛の子を散らすかのごとく皆俺の周りから居なくなっていった。
優しくしてきた結果がこれか……。
そう思うと俺は生きる気力も働く気力も無くし仕事を辞め、ごはんも食べずに自宅に引きこもった。
どれ程引きこもっていただろうか。
五日からはもう数えていない。
その時ふと手元にあった、某大人気ファンタジーRPGゲームを元にしたライトノベルが気になった為残る体力を振り絞りながら読み直すのだが、その物語に出て来る悪役貴族に俺は心を奪われてしまい、食べる事さえ面倒くさいと思っていたにも関わらず、俺はこの作品を読む手を止めることができなかった。
自分が思うがまま自由に生きて、その結果他人に迷惑が掛かろうとも関係ない。
その生き様が羨ましいと、何度読んでもそう強く思ってしまう。
しかしながらその悪役も結局主人公に全てを奪われて最終的に切り殺されてしまう。
なんだ、こいつも俺と同じじゃないか。
もし俺がコイツならば、もっとうまく生きて殺される事無く生きて見せるのに。
自分もコイツと同じように全てを他人に奪われておいてどの目線で偉そうな事を言えるんだと、自分自身そう思うのだが、一度失敗したからこそ分かることもある。
俺ならば、きっと上手く生き抜いて見せるのに……。
そう強く思ったところで俺の意識は途切れてしまった。
◆
目を覚ますと見知らぬ天井であった。
使っている寝具も、いつもの敷布団ではなくてキングサイズはあろうかというベッドであり高級であるのがすぐに分かる程ふかふかで、掛け布団もまるで羽のように軽い。
そして周囲を見渡すと鏡があったので俺はベッドから降りて鏡恐る恐る覗き見る。
そこには見覚えのある顔が映っているではないか。
「……まさかロベルト・フォン・クヴィスト……なのか?」
そう、そこに映っている人物はどうみても先程まで読んでいた異世界ファンタジー物の、序盤でざまぁされる悪役令息そのものではないか。
これは、死に際に見る夢なのだろうか?
そう思うのだが、肌に感じる空気の流れ、窓から差してくる太陽の温かさ、顔を触った時の感触、部屋に飾ってある花の匂い、そのどれもが夢ではなく現実であると告げてくる。
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