第3話 波乱のサークル見学!?

 進藤しんどう君が協力してくれるとは言っていたけれど、いきなり知らない人と関わるのは、かなり怖いよ。またハブられたら、今度こそ、人間不信になりそう。でも、変わる為には、何かしら、行動を起こさないといけないし......


小森こもりは今日の授業、何限まで?」


「えっ、私は四限までだよ。でも、帰宅後に、書き終わった作品の推敲をしてから、投稿する予定が......」


「マジか。正直、凄く気になるけど、最近の投稿頻度を見た感じ、急ぎでは無いよな?」


「うん......そうだね。明後日までに投稿出来れば、平気かな。」

 

 というか、愛宮陽永の作品投稿頻度を把握しているなんて、本当に、私の小説を読んでくれているんだね。読者様と直接会ったことは無いから、変な感じがするよ。


「だったら、今日の放課後、俺が所属しているサークルの見学に来ないか?」


「えっ、何で私に、サークル見学に行こうなんて誘ったの?」


「小森は、自分自身を変えたいんだろ?だったら、新しい環境に飛び込んで、人脈を広げないと。」


「うっ、いきなり知らない人と話すのは、なるべく避けたいよ。まずは、小さな一歩から始めたいな。」


「そんなことを言ってたら、言語のクラスが一緒の人以外と話せないことになるぞ。てか、俺の知り合い達だから、仲介するし。これでも、比較的負担の少ない案だ。」


 確かに、全く知らない集団に放り込まれるよりは、仲介してくれる人がいた方が、気が楽だね......けれど、勇気が出ないから、やんわり断ろう。


「あの、今日じゃなくて、後日にしない?」


「後回しにしたら、予定があるとか言って逃げ出しそうだから、今日にする。ただし、合う合わないはあるだろうから、入サーを強要することはしない。」


 進藤君には、私の思考が筒抜けなんだね。一応、逃げ道はあるのなら、ここは、従っておこうかな。


「分かったよ。放課後、××校舎の入口に待ち合わせで良い?」


      「うん、了解。」


         ***


 授業を受け終えて、放課後に突入。進藤君に連れられて、やって来た場所は――――


「創作、研究会?」


「そう、各々が好きに小説やイラストを創っているサークルだ。ちなみに俺は、イラストがメインで、まれに小説を書くってスタンス。」


「私が、ここで小説を書くってこと?」


「出来ればそれが一番だけど、無理なら、部誌の編集を手伝って欲しい。学祭の時に頒布したいのに、作業が追いついてないからさ。」


        「う〜ん」


 愛宮えのみや陽永ひなと私が同一人物ってことは、これ以上、周りにバレたくないよ。一応、ペンネームを変えれば平気かもしれないけれど、同年代で小説を書いている人なら、愛宮陽永の小説を読んだことがあって、文章の癖を知られている可能性もあるかも。それを踏まえると.....


「私は、編集を手伝うよ。パソコンは日常的に使ってるから、力になれると思う。」


「オッケー、編集希望だって、先輩達に話を通しておく。」


        "ガチャ"


「こんにちは、知り合いを連れて来ました。ひとまず、見学をしたいらしいです。」


「へぇ〜、良ければ、あたしが案内するよ。」


有沙加あさかさん、ありがたいんですが、小森は人見知りをするタイプなので、まずは、有沙加さんの紹介をしないと......」


「オッケー。あたしは、二年の楠美くすみ有沙加だよ〜。創作研では、小説を中心に書いてるの。」


「私は、小森 千影ちあきと申します。よっ、よろしくお願いします。


「うん、よろしくね〜。って、ちょっと待った!」


「えっと、私、何かしちゃいましたか?」


「貴女、その状態で、ベストパフォーマンスが発揮できると思っているの?」


「あのっ、どういう......」


「目の下にはクマがあるし、肌は荒れてるじゃん!加えて、髪の毛も整っていないし、不健康で、美しくないよ。」


 この先輩、人の見た目に対して、口を出してくるタイプなんだね。高校の時の子達を思い出して、なんか、嫌な感じ。


「有沙加さん、今はサークルの見学を先に終えたいんで、見学後に話してくれませんか?」


「うぅ〜ん、本当は、今すぐに話したいけど、少しなら待てるよ。」


「ありがとうございます。ほら小森、行こう。」


「進藤君、分かったよ。」


 その後、創作研のメンバーを一通り紹介して貰ったり、過去の部誌を読んだりして、サークル見学を終えたの。雰囲気自体は良かったし、部誌もそこそこ面白かったから、入っても良いかなとは思ったよ。けれど、

問題は―――


「見学は終わったんだね。さっきは動揺してて、突っかかるみたいな形になってごめん。けど、今は落ち着いたから、順を追って話せるよ。」


        「はぁ」


「まず、あたしの信念は、健康かつ美しい身体が、ベストパフォーマンスを生み出すってことなの。だから、千影ちゃんが不健康そうなことが心配で......ちなみに、昨日の睡眠時間を聞いても良い?」


「えっと、深夜12時に寝て、五時半に起きたので、五時間半です。」


「少なっ、六時間は寝ないと、頭が回らなくて、良いアイディアが出ないよ〜。」


「私は、小説を書くためではなくて、編集を手伝うために、入サーしようと考えています。だから、あまり関係ないかと......」


「そっか〜。でも、編集も正確性が重要だから、どっち道、睡眠時間は増やした方が良いと思う。じゃあ次は、ヘアケアとスキンケアに関して教えてね。」


「私が髪の毛を洗う時は、時短の為に、ジャンプーとリンスを混ぜて洗っています。けど、ドライヤーで髪を乾かすことが面倒なので、扇風機の前で三十分くらいくつろいで、乾かしていて......


 スキンケアは、ぬるま湯で洗顔する以外は、特に何もしていません。」


「だめぇ〜!それは、美しさから逃げてるじゃん。例えるなら、目的地と逆方向にダッシュしてる感じだよ〜。あたしは別に、千影ちゃんに対して、メイクをばっちりしてとか、オシャレな服を着てとまでは言いたくないの。+αプラスアルファをするかどうかは、個人の自由だからね。けどさ、外見と内面はリンクしているから、身体が美しく健康でないと、気分が上がらなくて、良いパフォーマンスができないわけ。だから、あたしが千影ちゃんを変えてみせるね!」


      「えぇ〜っ!?」


 彼女が何を言っているのか、完璧に理解したわけではないよ?けれど、これだけは言えるの。どうやら私は、入サーを超える面倒ごとに巻き込まれたみたい......


                 続く

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