第4話『ガガガガ』
「ドイメちゃーん、逃げちゃダメだよw かわいい『子猫ちゃん』
あわれな
奴隷たちが朝に体操をする広場のまん中で、
おかっぱの金髪に猫耳をつけた、
西洋人みたいな青い目をした白い肌の、
日本人顔のメイド服すがたの女の子がとらわれ、もがいていた。
彼女の影のほかに、もう一人の小さな
さらにもう一人ぶんの、大きな影がうかんでくる。
そうやって
「その、ンコソパ様にはキズひとつ、つけたりしてないだっぺ。おとなしく
「グヘヘへへ! ドイメさんよ。ここの奴隷になりたくなけりゃ、クタオ様の言うとおりにするんだな! グヘヘへへ!」
「俺は女は
俺が『らんぼう』しなくても、そちらの盗賊の
三人の影は、風に吹かれるたいまつのあかりにのびたりちぢんだりして、犬や猫、山やキノコ、大きなドラゴンなんかに変化した。
オレと佐藤は魔法ドラッグでぶっとびすぎて、少しもうごけず窓のまえに
ひらきっぱなしの窓の
(※大麻に幻覚作用は無い、と言う専門家がいる。しかし大麻で幻覚が見えるという人間もいる。まあどっちでもいいことだ。哲学者のヴァルター・ベンヤミンは『陶酔論』という本で、ブリブリになりながら大麻の幻覚について書いた)
「ンコソパ様……オラは、オラは、なにもできなかったズラ。くやしいだっぺ……」
「グヘヘへへ! 手配書に書かれていたとおりドイメさんのことは、ていちょうにあつかわせていただきやした。しかし、ガチャガチャ・ガールズの研修生とは……おしいねえ。ネコ族で、これくらいベッピンの奴隷なら、グヘヘ、都会に家が買えるくらいの値段はつきますぜ!」
「おおスゴラノビタさん、おつw まあ俺、女には興味無いっつーかw まあ仕事で来ただけだけどさ♪」
「ヘエ、ヘエ! グヘヘへへ」
「まあでも男が女を守るのは当然、みたいな?(パン、パン、と、手のひらをこぶしでたたきながら)それが俺の『ポリシー』だし(しゃべっている汗かきデブのメガネが光って、ドイメのすがたをうつす)。女ってなんで『正解』がわからないんだろ? ずっと俺のところにいれば『幸せ』なのに……カッコつけるわけじゃないけどさ♪ マジで『女とか興味ねえわ』w」
「ヘエ。ヘエ。ヘエ。ヘエ」
「今日『コーヒー』飲みすぎて『三時間』しか寝てないんだよね……いつもだけどw ま、どうでもいいけど。まあ、俺はケンカとかあんましないけどさ……本気だすと『こわいよ』? 俺ん
「ヘエ、ヘエ……さ、さすがクタオ様ですねえ! グ、グヘヘへへ! ヘヘヘ、ヘ」
「こんど帝国の機械魔法のライセンス試験うける……いちおう貴族w 俺も金持ちになりたくて『金持ち』やってるんじゃねえよ? あー機械魔法めんどくせw ま、俺なんて『全然たいしたことないけどさ』? ぺちゃくちゃ、ぺちゃくちゃ、ぺちゃくちゃ、ぺちゃくちゃ
ぺちゃくちゃ、ぺちゃくちゃ
ぺちゃくちゃ、ぺちゃくちゃ
ぺちゃくちゃ、ぺちゃくちゃ」
ドイメとよばれた黒いメイド服のガキは、オレたちを奴隷にしたラリゴ盗賊の親分、
そしてそのとなりに、えらそうにドイメと盗賊の親分にツバを飛ばしてしゃべりつづける、コスプレイヤーみたいな
クタオは背がひくく小ぶとりで、天パで、ふちなしメガネをかけて、
おもに口呼吸をしているこの貴族の服を着たブタは、なんだろうな? たわいもないつまらないことを、まだぺちゃくちゃと話していた。聞く耳をもたない、人まえで
まれにみるマヌケ。人をイラつかせる天才。日本に転生したら総理大臣になれるだろう。
クタオは、いったいなんなんだろうな。なんかダルい感じのやつだった(このウザい感じ、シャブでもやってんのかね?)。
「ぺちゃくちゃ」
「と、ところでクタオ様、めずらしい鉄の車を手にいれたんで。これも買ってくれねえかな? みょうな二人の冒険者が乗っていたモンで、グヘヘ、たぶん機械だと思うんだがね」
戦闘機みたいにコンビニへバンザイ・アタックする
いつのまにか広場の彼らの足もとに、ライブのステージで
「グヘヘ、クタオ様? グヘヘヘヘ…… ク、クタオ様?」
クタオは白人の少女みたいな顔だちの、ピンクのドレスを着た人形のスカートのはしをつまんで中を見ようとしていたが、盗賊に声をかけられてサッとメガネを押しあげ上をむいた。
ドイメがンコソパ様とよんだ人形はラリゴ盗賊たちにとっつかまるまえ、だいじそうに彼女が持っていたものだ。人形の髪の毛は、スマホやイヤホンなんかを
あの美少女フィギュアみたいな人形をドイメが盗んで、クタオがとりかえしに来たってことか? クタオは物にたいする
足もとから甘いにおいのするケムリが、小さな
「ぺちゃくちゃ、ぺちゃくちゃ」
「ヘエ、ほかにも変な
「ぺちゃくちゃ?」
「ヘエ、ヘエ。あとはこの機械の車のなかに、価値のありそうな楽器がありやす。おおかたこの機械も、
さあ、ドイメさんともども、いくらで買ってくれるんですかい? しかし……」
スゴラノビタがうすいケムリのベールでつつまれた広場のはしっこを横目でにらむと、そこには
「グヘヘ。やっぱり帝国の機械兵ってのは、見てるだけでムカムカしてくるもんだね。クタオ様がいなかったら、ぶっこわしてバラバラにして売っぱらっちまうところだ!」
「ぺちゃくちゃ!」
「……ヘ、ヘエ。すみません。だけど味方だと、機械兵もおとなしいもんだね。俺たち盗賊は、いちどはこいつらに痛めつけられてるもんだからよお」
「ぺちゃくちゃ、ぺちゃくちゃ」
「グヘヘへへ、さすがクタオ様。機械兵までしたがえるなんて、さすが帝国の大貴族さまだ」
「ぺちゃくちゃ」
「しかし、いいのかね? 貴族さまと盗賊ふぜいがつるんでるなんて知れたら、さわぎになるんじゃねえか? グヘヘ。まあ、ここらへんは
「ぺちゃくちゃ!?」
「い、いや、おどすつもりなんてねえよ。めっそうもない! グヘヘへへ。まあ朝までにお
……え? なにアレ?」
にゃー、にゃー、わん、わんと、鳴き声がした。
どこからか茶色いノラ猫と、黒っぽいノラ犬が広場へフラリと入ってきた。
しかし、おどろくことにその動物たちはうしろの二本足をつかって、人間のように歩いてきた。
いや……歩いてきたというより、楽しそうにおどりながらステップをふんでいた。
にゃー、にゃー、わん、わん、歌いながら。犬猫にしてはおどりがうまい。
犬や猫では人間みたいな笑顔をつくることはできないはずだが、犬も猫もうれしそうに笑っていた。
ケムリが
「ぺ、ぺちゃくちゃ……ぺちゃくちゃ!」
「グヘヘへへ……変だぞ。な、なんだかアタマが、フワフワして。カラダが……」
ジリリリリリ! いきなり機械兵のカラダが警告音を鳴らし、スピーカーから機械音声が
ラリゴ盗賊の
スゴラノビタはよろめいて力がはいらず、ドイメのことをうまくつかまえておくことができないようす。
しかしドイメはドイメで、逃げだすことができないようだった。
クタオは顔を赤くしたり青くしたりしていた。
三人ともゾンビみたいにヨダレをたらして、うなりながらフラフラしている。
砦には奴隷たちのすむ小屋が
いろんな
オレと佐藤はひたすら大麻の魔法ドラッグ『ぶっとび丸』を吸っては
大麻のケムリ
世界が一枚の超巨大な
オレや佐藤が
シンナーが描かれた、
世界が一枚の超巨大な
ドイメが、
クタオが、
スゴラノビタが、
一枚の超巨大な
月、砦、小屋、やぐら、山、たいまつ、
奴隷たち、犬や猫なんかの動物たちが描かれた、
世界が一枚の超巨大な
心の中から吹くすさまじい風にはためいていた。
いまやラリゴ盗賊の砦はすべて雲のなかみたいに、オレたちがはきだした大麻の魔法ドラッグのケムリにつつまれて、
みんなぶっとびはじめていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます