14.


ドサッ。


間近に聞こえた大きな音で飛び起きた。

その原因を見てみたが。


「な……」


開いた口が塞がらない。

何故なら、明け方過ぎに出会った奴が祥也の目の前で倒れていたからだ。


「わうっ!」

「あ……っ」


一緒に起きていたらしいジルヴァが、祥也から奴の方へ行った。

思わず手を差し出していると、家の時のように悲しそうに鳴いて、こちらをじっと見つめていた。


助けろというのか。


しかし、散々人のことを馬鹿にしてきた奴だ。こうなるのも罰が当たったといえよう。

そう自身で納得し、一人と一匹を置いて立ち上がろうとした時、あろうことか、ジルヴァは袖辺りを咥えて、引っ張ろうとするのだ。

驚いたのも束の間、そうしてればいいと背を向け、歩き出そうとしたものの、最初の一歩が、重い。


気かがりだというのか。馬鹿な。


仮に奴はどうでもよくても、あの小さくていたいけな獣が自分よりも大きいものを、一生懸命引っ張っている。


そして、そんな小さな獣を自分は怒鳴りつけてしまった。


──そう思い、気づいた時には、肩に手を回していた。


「……っ!」


思っていたよりも重い。

歯を食いしばって、足元でどこか心配げに鳴く獣に、「……大丈夫だ」と聞こえるか聞こえないかの声量で返し、帰っていった。

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