11.
少しでも居心地よかった場所も、自分で壊してしまった。
だが、自分の家であった場所も、帰れない。
重たい足取りで道にさまよっていた。
かといって、他に帰れる場所がない祥也は、行き帰りで通る公園へと赴き、ベンチに座った。
砂場とブランコしかない公園は、朝の早い時間帯であるため、当たり前に誰もいない。
実家にいた頃は帰りたくなくて、こうして公園で時間を潰したことがあった。
しかし、遅く帰ってきても罰として、外の玄関前で次の日まで正座をさせられた。
どこにいても、嫌なことが増えていくばかりだ。
過去から逃れるように、公園から出て行く。
「──あ、兄貴。今日は早かったんだ」
帰りたくもない家路へと足を向けた時、こちらに向かう奴がいた。
関わりたくないと素通りしようとしたが、腕を掴まれた。
「ちょ、待ってくれよ。おれ、今から朝練だから、ジルヴァのこと頼もうと思っていたんだ」
「……お前が世話すればいいだろ」
「はぁ? 兄貴が出て行った時から、ずっと玄関前に座って、寝ずに待っていて、今ようやく寝たっていうのによ!」
「…………は?」
なんでそんなことを、と思わず顔を向けると、怒っている奴と顔が合った。
「じゃ、遅れるからっ! ちゃんとしろよ!」
鼻息を荒くして、奴は駆け出していった。
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