3.

「あれ? もしかして、兄貴?」


打ち終え、合計を告げようとした時、男子高校生からそのようなことを言われ、思わず顔を上げる。


「あ! やっぱり、兄貴だ! こんな所にいたんだな!」


黒髪の人懐っこそうな男子に、は? と声を上げたが、実際には掠れた声が漏れただけだった。

「久須なんて名字、そうそういねーもんな」と話を続ける男子の声は祥也の耳には届かなかった。

自分のことを兄貴と呼ぶ男子高校生。

よくよく見てみれば、見慣れていた顔であることを今になって気づく。

自分のことを見下していた、あの表情──。


「·····人違い、だ·····」

「は·····?」

「俺には、兄弟がいません。たまたま同じ名字がいただけです」

「なわけねーって」

「それよりも、お会計をお願い出来ますしょうか」

「な、兄貴──」

「これ以上突っかかってますと、営業妨害で訴えますよ」


怒りと嫌な記憶が頭にチラついているせいで、吐き気と言葉の端々が震えているのを何とか堪える。

その目の前の男子は唖然とし、周りの男子は、「なんだコイツ」と文句を言っているが、目を合わせず、ただ俯いていた。

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