第39話 迎撃開始

 都市の入り口に行くと、そこでは兵士達をまとめているギランの姿があった。


 それは堂に入っていて、彼が来てくれて本当に良かった。


 そして俺達に気づいたギレンが、駆け寄ってくる。


「アニキ! アネゴ!」


「ギレン、お疲れ様。それで、首尾はどうかな?」


「はっ! 既に前衛の者達を集め終わって、後は来るのを待つのみですぜ!」


「おっ、ありがとう。それじゃ、パンサーさん」


「うむ、任されよう」


 パンサーさんが梯子を使って城壁の上に登っていく。

 彼には弓部隊の指示をお願いしている。

 パンサーさん自身は足が悪いが、弓にはそこまで影響しないから適任だ。


「オルガ、君は予定通りに俺を守ってね」


「は、はい! 頑張ります!」


 オルガの役目は最前線に出る俺の護衛となる。

 彼が俺の命綱のようなものだ。


「クレハ、君は予定通り大物を見つけたら教えてね。決して、無理はしないこと」


「はっ、畏まりました」


 クレハの役目は遊撃プラス、大物を見つけたら知らせること。

 場合によっては時間稼ぎをしたりする危険な役目だ。

 普通の兵士では倒すことはできないから、俺が特大魔法で仕留める予定だ。


「よし、それじゃ各自……必ず、生き残ること」


「「はい!!」」


「これが終わったら俺——ダラダラするんだ」


「……エルク様、そういうのって死ぬ前の兵士が言うやつです」


「はっ! そうだった!」


 今の、完全に死亡フラグじゃないか!

 ダメダメ! 俺はグータラスローライフするんだやい!


「ふふ、大丈夫です——私が、貴方を死なせはしない」


「それはこっちのセリフだけどね。んじゃ、来るまではゆっくり待つとしますか」


 そうして、待つこと一時間くらい経ち……再び伝令が走ってくる。

 最速を誇るチーターの猫獣人が、俺の前で急ブレーキをした。


「エルク様! あと十分ほどで魔物の大群がきます!」


「伝令、ありがとう。それじゃ、行きますか」


 俺はクレハとオルガを伴い、門の外へと出る。

 その後を、ギレンが率いる部隊がついてくる。

 俺は一番前に立ち、すぐに魔法の溜めに入った。


「クレハ、タイミングは教えてね」


「お任せください」


「オルガ、俺は魔法に集中するから守りは任せるよ」


「はい! 任せてください!」


「ギレン、俺の魔法が決まったら後はお願いね」


「へいっ! お任せを!」


 三人に改めてお願いした俺は、目を閉じてその時を待つ。






 そして、その時が来た。


 前方からドドドという音が聞こえてくる。


「エルク様、まだです」


「うん、わかった」


「……今です!」


 その合図に目を開け、溜めに溜めた魔力を解き放つ。


「大地よ凍れ——アイスフィールド氷の床


「グォォォォ!?」


「ギギィィ!?」


 俺の放った魔法は、見渡す限りの大地を凍らせた。

 それによって、魔物達が滑って転んでいく。

 場合によっては、お互いに衝突をして自滅していった。


「エルク様!」


「うひゃぁ!?」


 クレハが俺を担いで、その場を飛びのく。

 そして最前線にいた魔物達は、氷の地面を通り過ぎて俺達がいた場所を転がっていった。

 そう、そこは


「野郎ども! いくぜ!」


「「「おう!」」」


 ギレンが先頭に立って、兵士達が転んだ魔物達を始末していく。

 その間にも、氷の上で転んだ魔物達の動きが止まる。

 そいつらはまだ氷の上で、うまく身動きが取れない。

 つまり……格好の餌食だ。


「パンサー殿!」


「うむっ! 皆の者——放てぇぇぇぇぇ!」


 城壁にいるパンサーさんの号令により、転んだ敵に矢が降り注ぐ。

 それによって、更に敵の数が減っていく。


「エルク様! 作戦は成功です!」


「だね! でも、まだまだこれからだよ!」


 そう、これが俺が考えた作戦だ。


 氷魔法で地面を凍らし、最初に最大限のダメージを与える。


 数で劣る俺達が、このの敵と戦える力を残すために。


 そう……まだ上位種の姿がないから。

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