第13話 お前がいなきゃダメなんだ!
【前回のあらすじ】
# ♪ ♭
ヒーローになりたい。
子供の頃から
物心ついた時から、
自分を突き動かす想いは、どこから来ているのだろう。
(父親……オレの…………いない……――)
「難しく考えなくていい。
レもんの声に意識を引き戻される。そうだ。考えるべきは、どこから来たかではなく、どこへ向かうかだ。
「こないだ言ってたよな、お前。この世界は魔王が手に入れるとか」
「そうだ。人間たちは納得はしないだろうが……」
「ああ、気に食わねぇな――!」
「ぅぐ……っ!」
「てめーこそオレをナメんじゃねーぞ! 伯爵だか侯爵だか知らねーが、全員返り討ちにして、てめーらの親玉引きずり出して、そいつもブッ倒してやる!!」
威勢よく
「言ってくれたな……何たる不敬っ!」
「うるせぇっ! オレが魔王をブッ倒すっつったらブッ倒すんだよ! そんでお前を辛気くせぇ悪魔の仕事から解放して、明るく楽しい学園生活送らせてやっからな! 覚悟しやがれ!!」
かち合う掌打と拳。肘打ち、足払い。互いに防御し、あるいは回避しながら、反撃に継ぐ反撃を繰り出す。
激化する応酬と反比例するように、レもんの表情から険しさが抜けていく。
「ハハッ……
「別にお前のためじゃねーよ。
渾身のフックは、
「そんなの、あーしじゃなくたって――」
「お前じゃなきゃダメなんだよ!」
起き上がりざまの蹴りがレもんを
「見えるか!? レもん」
「いや、何も。反射的に身体が動いた」
レもんは他の悪魔よりも感覚が鋭いとは聞いていた。マキナや
「
「仕上がってきたっつーか、テンション
「その感覚を忘れるなよ――」
レもんは黒翼を広げ、中空へ舞い上がる。屋上での一戦のときと同じだ。両手のネイルに赤茶けた
「今からあーしは全力で絶技を放つ。それをオマエの新技で相殺してみせろ。できなければ……オマエは真っ二つになって死ぬ!」
レもんの言葉は多分、嘘ではない。拳で語り合った者同士、
信じられる。
(ありがとよ。オレを信じてくれて)
「喰らえ……〈
振り抜かれたレもんの両手が下向きに交差する。衝撃波となって飛来した凶爪は、一瞬にして
*
運命の水曜日。部活動が休みの今日、放課後の体育館を表立って訪れる生徒はいない。勝負事にはおあつらえ向きの場所だ。
2年G組の女子生徒二人による、空手部勧誘をめぐっての対決が開かれようとしていた。
「悪いなー。並べるの手伝わせてしまって」
敷き終えた畳の具合を確かめながら、空手部顧問・
「お安い御用ですよ。むしろウォームアップにちょうどいい」
頼もしい返事を返すのは、
「それにしても
「……アイツは絶対に来ますって。なぁ?」
同意を呼びかける
「開始時間は?」
「放課後としか。まさか学校休むとは思っていなかったしな」
当然、
「おい、
「今まで黙ってましたが、
三人しかいない体育館。広々とした空間を、時が止まったかのような沈黙が満たしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます