第2話 二人の出会いを思い出してさ
【前回のあらすじ】
# ♪ ♭
黒板の近くで
他にも、部長を含む三年生バンドが所属しているが、今日は欠席のようだ。
「今日もこの六人だけッスか?」
「部長たちはスタジオ練だって」
ドラマーが他校生なので、時々全員で合わせに行っているらしい。
いずれにせよ、中途入部の
目の前の黒髪美少女先輩――
「で、
「そうそう、新曲やっと出来上がりました!」
満面の笑みを浮かべた先輩の拍手に、
「おお~、早速聴かせてくださいよ」
「おっけー」
アンプ直のギター、シングルコイルの生々しい音色が
指板の上を流麗に舞い踊る細い指に、
(こんな綺麗な指から、よくもまぁエグいフレーズが次々と……)
「いいッスね。ベースラインはこんな感じッスか?」
「さっすが~。あ、決めの所はユニゾンでお願いね」
事実、
(あれから一カ月も……いや、一カ月しか経ってねーのか――)
*
あれは二年に進級直後、
「んだとぉ……このイカれババアがよぉ!」
ただならぬ剣幕の怒鳴り声が、女子トイレの中から聞こえてきた。
「テメェら……何があったか言えコラァ!」
「ひぃいい~っ!! 何なの、あんた!?」
女子たちは渋々と事の
「コンセント
「その辺の木っ端グループとチャックス(昭和のアングラバンド)を一緒くたにするなぁ~!」
一方で、
「そっちこそ
同意を求められても困る。何故ならば――
「そう言われてもオレ、両方好きなんだけど」
「ウソぉ! あんなマニアックなB級バンド聴いてる人、私以外にいたの!?」
「おいおい、チャックスに失礼だろ」
同時に女子グループも別の意味で驚いていた。
「え!? あんたみたいなゴリラがキラキラなガールズポップを!?」
「それはオレに失礼……っつか、二つとも別モンすぎて聴き間違えようなくね?」
「いや、だって……もっかい歌ってみてよ」
「♪~ふーんふーん、ふーんふふーん」
「な、なるほどなー……」
実際のところ
(歌うとき、ちょっと目細めるんだな……何か色っぽくね? つか、この娘めちゃくちゃ可愛くね!? 可愛いの擬人化じゃね!? 周りの奴ら、何でこんな冷静でいられんだよ!? おかしいだろがよ! ……オレがおかしいのか!?)
その十秒にも満たない時間がもたらした意味は、
(……そっか、オレ……今、恋してるんだ……)
*
ともかく、あの一件で同好の士と認められた
「
「す、すんません。ちょっと昔のこと思い出してまして」
「なぁんだ。てっきり夜のお仕事で疲れてるのかと思っちゃった」
「その言い方は語弊があるッス! ってか、こっち見んなテメェら!」
まさか「悪魔退治してます」などと堂々口にできるはずもなく。現時点では
(悪魔に動きがあったら連絡する、とは言われたけどよ)
雇い主のマキナとは昨日別れたきり、スマホにも未だ着信はない。
(伯爵級、とか言ってたな。あの女、わざわざ学校の体育館で召喚なんかしやがって)
屋内の広い場所が必要だと言うので、うっかり答えてしまったのだが――
「そういえば
「何ッスか? 先輩」
「新聞部の子が噂してたんだけど、
「……! へ、へぇ~……」
「まだ捕まってないらしいし、怖いよねー」
「そ、そッスね……」
*
とある場所に怪しい影が六つ、円卓を囲んでいた。
「ドナツィエルがやられたようだな」
「フッ、奴はボクら七伯爵の中でもそれなりに強い」
「…………」
石造りの台座、
「小細工頼みの強さなんざ信用ならねえな! 少なくとも俺様の方が上なのは間違いねえ」
「じゃあ次はアナタが行ってみれば?」
「あーしが行って来ま~す!」
緊張感のない声が申し出る。
「レモノーレ、うぬがか?」
「キミはドナツィエルとは仲が悪かったはず」
「
一斉に懐疑の目がレモノーレへ向けられた。
「いい機会だし、あいつよりあーしの方が優秀だって証明してやろうと思ってさ」
「許可しよう。皆もそれでよいな?」
「仰せのままに」
「ヘッ、今回は譲ってやるよ」
「行っておいで」
「……気を付けるアルよ」
*
「え~、皆さぁ~ん。今日は転校生を紹介しまぁ~す」
長髪の男性教諭が一人の生徒を招き入れる。
金髪をおだんごに結った、褐色ギャルの登場であった。
「オイッス! あーし、
「何かスゲーのが来たぞ……」
「この時期に転校生かよ」
「前の学校でやらかしたとか?」
ざわつく生徒たちを静めながら、担任は事を進めた。
「はぁい、静かにぃ~。では
「先生! あーし、この子の隣がいいでーす!」
レもんは独断で机を移動させると、隣の黒髪女子に挨拶をする。
「ってわけでよろ。あーしのことはレもんって呼んでね」
「うん。私も
# ♪ ♭
★
https://kakuyomu.jp/users/mano_uwowo/news/16818093082123227085
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