大集合①
彼の意思の主張。
それに対して屍河狗威は耳を澄ませた。
「ちょ…ちょっと待て…なんか、うるせぇんだけど」
外から声が響く。
屋上、では無い。
それはグラウンドからだ。
その声は、屍河狗威が立つ屋上にも聞こえてくる。
「屍河ァ…狗威ィ!!」
男の声だ。
余りにも耳障りに、屍河狗威の名を叫んでいる。
「なんだ?」
皆が屋上のフェンスから顔を出す。
グラウンドには、一人の男が歩いていた。
片腕から、ぬるりとした多くの触手を生やしながら、だ。
「貴様が此処に居るのは知っているぞ…全部、全部貴様のせいだッ、屍河狗威ィ!!」
その見た目に、術師である事は理解出来る。
屍河狗威は、百足楽灼煉の方に顔を向けた。
「知り合いか?」
だとすれば傍迷惑だ。
術理を使役している。
その状態で人に見られれば秘匿が破れてしまう。
早々に何とかしなければならない。
しかし、百足楽灼煉は首を左右に振った。
「知るわけないだろう…いや、見た事あるな…いややっぱり知らない…」
顎に手を添えて考える。
しかし、考えても分からない。
相手の顔は歪んでいた。
その歪みを隠す様に顔を包帯で巻いている。
よく見れば、大怪我をしていた。
仮染貂豹も相手の顔を見るが、首を左右に振った。
「何だ?…あー、なんだ…顔面が包帯だらけで全然分からないな」
誰も知らないと言う。
百足楽灼煉も知らない様子。
ならば、本当に赤の他人だろう。
屍河狗威は面倒だと思いながら叫ぶ。
「…しゃあねえなぁ…おい、お前、誰だよ」
その言葉に反応する男。
彼の顔を見て睨んだ。
「ッ!!狗威ッ、狗威貴様ァ!!よくも、俺の前に顔を出せたなァ!!」
顔を出せと言っておきながら顔を出せば怒り狂う。
矛盾した言葉と傲慢な態度に、屍河狗威は苛立ちを覚えた。
「…だぁーかぁーらぁー」
息を深く吸う。
そして、怒りを帯びた声で絶叫した。
「誰だって言ってんだろうがぁッ、先ず名を名乗れやマミー野郎がァ!!」
そして、男も狂気を見出しながら走り出して屍河狗威の居る屋上へと向かっていく。
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