億越えとの会話③


「はーはっはッ!ボクからのプレゼントはこれだけじゃない、とうっ…!」


まだ屋上に着陸していないヘリから飛び降りる。


「ぐわッ!」


そして見事に着地に失敗して足首を挫いた。

地面に向けて倒れる。

無様に転がると、痛みを覚えながら足首を両手で抑えていた。


「(三メートル位の場所から落ちたぞコイツ)」


運動神経が無いのかと、屍河狗威は思った。


「(流力操作で肉体を守らなかったのか?)」


何故、術師が使用出来る流力操作で運動能力を上昇させなかったのか。

仮染貂豹は不思議そうにそう思っていた。

足を震わせながらゆっくりと立ち上がる百足楽灼煉。

涙目になりながら、生まれたての小鹿の様に震えたいた。


「ぐふッ…ぐくっ…す、少し、派手に登場し過ぎた、カナ?」


痛みを我慢しながら言い放つ百足楽灼煉。

不死梟乂幡が百足楽灼煉を心配しながら近づいた。


「あわわ…だ、大丈夫ですか、百足楽様?」


彼の体に触れて杖になろうとする。

しかし、それを拒むと、足を引き摺りながら屍河狗威に近付く。


「いや、大丈夫大丈夫、さぁて…屍河狗威くん、はじめまして、ボクが百足楽灼煉だよ」


ゆっくりと手を伸ばす。

屍河狗威に握手を求める。


「(握手なんざするワケねぇだろ)」


当然、屍河狗威は拒否するのだが。


「ごヴぁぇごぼッ、ごぼッ!!」


唐突に、百足楽灼煉が口から吐血した。


「(ッ血い、吐きやがったッ!?)」


急な事に驚きを隠せない屍河狗威。

口元をハンカチで拭いながら深く呼吸をする百足楽灼煉。


「げふっ…ふはは、申し訳ない、ボクは昔から病弱でね、流力を肉体に流し込むと、臓器に負担を掛けてしまって死に掛けてしまうんだ」


流力は万能の源である。

しかし、人間には当然ながらアレルギーと言うものがある。

珍しいものだと、水アレルギー、紫外線アレルギーと言うものがある様に。

百足楽灼煉にとっては、流力アレルギーと言う術師にとって死活問題な虚弱体質となっていた。


「テメェが…百足楽灼煉か?俺を勧誘しようなんて、バカな事をほざいてる奴は…言っておくが、俺の王はただ一人だ、簡単に靡くワケねぇだろうが」


早々に屍河狗威は、百足楽灼煉に自らの意思を伝える。

これだけは絶対に譲れない事であり、それを否定する事は即ち、敵である事を示すのだが。


「ならその胸元から見える札束を捨てろ馬鹿」


百足楽灼煉がばらまいた万札を甚平の懐に収納している。

いまいち、締まらない状況であり、仮染貂豹はそう屍河狗威に突っ込むのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る