憂鬱な夢③
そうして、登校の時間。
屍河狗威は欠伸をしながら道路を歩く。
歩道では、小さな小学生の集団が元気よく歩いていた。
道行く人に挨拶をする様は、純粋無垢な子供の心に触れる様な気がして気分が良い。
寝惚けながら、小学生の歩みを見ていた矢先。
屍河狗威に話し掛ける者が居た。
「狗威」
声のする方へと顔を向ける。
そこに居たのは、仮染貂豹だった。
相変わらずのつぎはぎ顔は、事情を知らない者が見れば、抗争をしたヤクザの様に見えて恐怖の対象と移る。
おまけに、サングラスを装着した柄の悪い屍河狗威の隣を歩けば、その二人は極悪コンビとして周囲の人間が警戒する程の恐ろしさを与えた。
「あ?あぁ、貂豹か、んだよ朝から」
欠伸を噛み締めながら、屍河狗威は彼の名前を口にした。
すると、仮染貂豹は懐から手帳を取り出した。
片手で扱える、昭和の時代の刑事ドラマの刑事が使う様な手帳だ。
指で軽くページを開き、自分がメモをした内容を確認する。
「いや、ちょっとな」
そして、自分が調べた事を屍河狗威に伝えようとした。
しかし、屍河狗威はそれを無視して、他の人物の事を聞いた。
「緋奈燐さんは?」
創痍修緋奈燐。
昨日の挨拶から姿を見ていない。
朝早くから何処かへ出かけたのかと、屍河狗威は思った。
そして、それを仮染貂豹に伺うと、彼は事情を知っているのか、屍河狗威に向けて事情を説明した。
「先に行って玉子焼きの練習してる」
昨日、散々、学生食堂の職員に言われたのが効いたらしい。
自主的に学生食堂で料理の練習をしている。
「なんで?」
料理をするだけならば、誰でも出来るだろう。
その様な偏見を持つ屍河狗威に、仮染貂豹は彼女が練習をする様になった原因を口にした。
「いや…食堂のおばちゃんになんか言われたらしい」
少しだけ同情した屍河狗威。
学生食堂にしては料理が美味い。
職員もそれなりに誇りを持っているのだろう。
だから、甘えは許されない環境であるとは薄々思っていた。
「へぇ…あの人も大変だねぇ…」
そして話を切り替える仮染貂豹。
「それで、お前に知ってて欲しい事がある」
改めて手帳に視線を戻す。
「なんだよ急に、朝っぱらだからあんま頭ん中には入らねぇぞ」
既に、阿散花天吏との会話の内容すらも忘れている。
本当に朝に弱いらしいのだが、それを承知で仮染貂豹は会話を続けた。
「どうやら、俺ら以外にも、あの学校に術師が居るらしい」
目が覚める様な内容だった。
あれほど、眠たそうにしていた屍河狗威は、すぐに眼を見開いた。
「…あんだって?」
眠気など、あっという間に消え去った。
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