暇な日常④

そうして、配下が集う学園生活が始まったのだが。

いきなり、創痍修緋奈燐は学生食堂にて戦力外通知をされてしまった。


「はい…はい…ごめんなさい」


食堂での一件。

創痍修緋奈燐は何度も頭を下げていた。

厨房では、年上の女性から詰められている。


「あのねぇ創痍修さんさッ、これくらいのものも作れないワケ!?」


そう言われた。

皿には、黒焦げになった料理が置かれている。

それは最早、料理と呼べるようなものでは無かった。


「学生食堂は戦場なんだよ、一つのミス一つで暴徒が押し寄せてくるんだから、ミスは絶対、ぜぇったいに、許されないの!!」


料理を指差す職員。

創痍修緋奈燐が作っていた焼き魚定食。

魚が焦げ過ぎて真っ黒になっていた。


「だってのに、どうしてこんなに、真っ黒になるまで料理を焦がせるのかねぇ!?」


職員の責め立てに彼女は頭を下げ続ける。


「あの、本当に…ごめんなさい…」


流力の影響か。

彼女から無意識に流れる焔印の余熱によって料理が焦げる事が稀にある。

創痍修緋奈燐は涙目になりながら必死に謝罪を口にしていた。


「まあ、落ち着きなよ、卵焼きくらい簡単に作れるだろう?火の調整が難しいってのなら教えてやるからさ、先ずは簡単なもんから作ってみよう、ねぇ?」


優しい職員がやって来て、彼女に料理を教える事にした。

台所に立って、一先ずフライパンと火力調整の仕方を教えていく。


「は、はい…ありがとうございます」


教わる事に関して頓着は無い。

まだ見捨てられてないと言う希望で彼女は胸がいっぱいだった。


「ほら、作ってみな、卵をフライパンに乗せて焼く、簡単だろう?」


職員に言われるがまま、創痍修緋奈燐は料理を作っていく。


「えっと…こ、こうして…こう、で…あ」


最早、料理とすら呼べるのか分からない程に簡単な調理を、彼女はいとも簡単に失敗させた。


「なんでこんな、卵を焼いて黒焦げになるんだい?」


火の調節は間違っていない。

ただ、彼女から漏れる焔印が、玉子に集中して黒焦げになるのだ。


「火、火の調節が難しくて…」


その様に、創痍修緋奈燐は言い訳を口にした。

流石の微笑みを浮かべる職員も、彼女は使い物にならないと理解したらしく、キッチンの方に指を向けて言った。


「これじゃ玉子焼きじゃなくて炭焼きだね、創痍修さん、とりあえず皿洗いに回って頂戴」


二度と厨房に立つな、と強い圧を込められて告げられる。


「ご、ごめんなさぃぃ…」


彼女は泣きながらキッチンで皿洗いをする事になった。

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