暇な日常③


「どういうつもりだテメェッ」


屍河狗威は屋上で彼女に向けて叫んだ。

壁に押し付けられた阿散花天吏は屍河狗威を見ていた。


「別に、私だけではありませんよ」


その言葉に他の人間も来ていると、屍河狗威は思った。


「代理戦争の代表者として選ばれた以上、狗威様の護衛を務めるのは当たり前の事です」


現在。

屍河狗威は代理戦争を統括する代表者だ。

術師の家系にとっての重要度はかなり高い位置である。


「既に、屍河狗威と言う存在は、妃龍院家にとって重要な存在になっているのですから」


故に。

屍河狗威に何かあれば、大問題になる。

それ程までに、屍河狗威の地位は高い。


「そういう事だ、狗威」


屋上へと入って来る生徒。

それは、見覚えのある金髪とツギハギ顔。

もう一人は、エプロンと三角巾を頭に着けた女性だ。

その姿を見て、屍河狗威は名前を口にする。


「あ?貂豹、それと…緋奈燐さん」


屍河狗威の視線は彼女に向けられた。

創痍修緋奈燐。

あの濃厚な一夜の後から、数日ぶりだった。

顔を赤くしながら、包帯を巻いた手を軽く振って挨拶をする。


「はい…お久しぶり、です」


そして。

屍河狗威は彼女の姿を見た。

学園ではあまり見かけない姿だ。


「…なんすか、そのカッコ」


そう言われて彼女は自分の現在の役職を口にした。


「えぇと、一応は、学生食堂の職員として採用されたので…」


食堂のおばちゃん枠として、学園に就職したらしい。

そう言われて、屍河狗威は納得した。


「あぁ…(年齢の問題で生徒にはなれないからな)」


しかし。

他にも役割はあっただろう。

例えば、教師とか。

沿う屍河狗威は思ったのだが。

先に創痍修緋奈燐は告げた。


「それに、あまり、頭の方も良く無いので…教師役は難しいと」


妙に納得した屍河狗威。

しかし、彼女が食堂勤務とは…。

屍河狗威は、彼女の淫靡に満ちた体を見回し、そして包帯を巻いた手を見て言った。


「…どちらにしても、料理する時に手ェ洗って下さいよ」


「い、一応、料理を作る時はゴム手袋を付けるから…」


屍河狗威の物言いに、難色を示した仮染貂豹。


「お前失礼な事言うな…まあ、そういうワケだ」


屍河狗威を守る為に集った部下たち。


「なるべく、お前には接触しない様にする、お前は適当に過ごしとけ」


それだけ言い残すと、屍河狗威は適当に頷いた。


「へいへい…」


そうして、話は終わるのだった。


「んで、なんでテメェは…ご主人だとかそういう、俺の意図を汲めない様な事を言うのかねッ!?」


屍河狗威は阿散花天吏にそう叫んだ。


「(ご主人…あ、そういう事を…教室で?…んっ、いいなぁ…)」


屍河狗威の言葉に創痍修緋奈燐は羨ましそうに発情していた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る