心境の変化②
珍しく素直だった。
「なんだよ…抱かれたいのか?」
冗談半分で、屍河狗威がそう言った。
しかし、彼女は冗談抜きで答える。
「…そうですね、少し、人肌恋しいと言いますか」
貴方が恋しい。
とは言わなかった。
だが、最早、そういう意味だろう。
屍河狗威は頭を掻いた。
彼女の事を考えなければならない事に関して面倒だと認識した。
「あー…まあ、正直な話だけどよ、お前の頭の良さは買ってる」
そう前置きをした。
「でも、これから先、抱く気はねぇよ」
と。
屍河狗威はそう告げる。
それは、彼女に魅力が無いと言う意味でも、身体に飽きたと言う意味でも無い。
単純に、彼女の価値が体では無く、頭脳と能力が上回った為だ。
だから、身体を玩ぶよりも、その技量を奮って貰った方が良いと、考えた。
しかし、屍河狗威の言葉に、彼女は納得していない。
「…は?」
明らかに、不満を抱いた一声だった。
「は?って言われてもな…お前の価値は女体じゃなくて、その技術と頭の良さ、だから、今後はそっち方面に期待するって…」
その様に、屍河狗威は説明する。
それでも彼女は納得いかない様子だった。
「他の女は抱くのにですか?」
自分は、他の女よりも体の価値が低いと言われているようなものだった。
屍河狗威は、図星を突かれながらも、首を左右に振る。
「…嫌な言い方するんじゃねぇよ(正解だけどよ)」
阿散花天吏の言葉に頭を悩ませた屍河狗威。
そんな彼に、彼女は笑みを浮かべた。
「ふふ…そうですよね、そうでしょうとも、所詮…私は他の女性よりも魅力が低い、貴方が好きなのは、頭の栄養が胸と尻に吸われた様な駄肉と贅肉まみれの女でしょうし」
実に嫌な言い方だった。
屍河狗威は、最早、本当の事を言わざるを得ない。
だから、彼女に自分の秘密の一部を語ろうとした。
「あのな、俺が女を抱くのは」
けれど。
やはりと言うべきか、台詞に被せる様に、阿散花天吏が発した。
「理解しています、
既に、屍河狗威の秘密を察していたらしい。
けれど、それを理解しているのならば。
屍河狗威は、彼女を抱くメリットは無いと言っている様なものだ。
押し黙る屍河狗威。
そんな屍河狗威の珍しい表情に、彼女は微笑を浮かべてみせた。
「ふふ、安心して下さい」
そう言われて、彼女が冗談を言っていると思った。
目に見えない圧に黙っていたが、冗談だと知り調子付く屍河狗威。
「なんだよ、急に笑いやがって」
心臓に悪い事だ。
彼女は微笑みを浮かべている。
「いえ…其処まで思い詰めた顔をなさってたので、少しからかったまでですよ…ほんの冗談です、本当ですよ?」
しかし、後になって屍河狗威は、彼女の目が笑っていない事に気が付いて、笑みを浮かべる事が出来なかった。
「な…あのな、お前」
会話を試みようとする。
けれど彼女はそれを拒んだ。
代わりに、彼女は自分の考えていた事を口にした。
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