新しい役職③
自慢げに屍河狗威は言った。
「へぇ…じゃあ俺、結構凄い感じ?」
その問いに関して、仮染貂豹は答えなかった。
代わりに、彼の無知に対して追及していた。
「マジで何も知らねぇのかよ…よく術師でやって来れたな」
その様な話をしている最中。
妃龍院家の老臣達が騒ぎ立てている。
「そんな事、認められぬ」
「何故この様な男がッ!」
「部外者ですぞ!!それに」
彼らの言葉は嫉妬混じりだった。
しかし、屍河狗威は、その台詞の中で決して聞き逃せぬ言葉を聞いた。
「夜久光様の役職を奪う様な真似をッ!!」
その言葉を聞いて、右から左へと聞き流していた言葉を拾い直す。
「え?…義兄さんの役職?」
代理戦争。
その代表者。
前任は、妃龍院夜久光である。
その事を老臣から教えられた。
近くに居た仮染貂豹が話し出す。
「代理戦争だから、当然、前職が居る」
代理戦争の統括である以上、その役目は一人。
であれば、屍河狗威が新しい座を受け継ぐ事で、その座に就いていた前任が降ろされると言う事。
「…それがその、妃龍院夜久光殿ってワケだ」
そう言われて怪訝そうな顔をした。
如何に、自由奔放に動ける役職であろうとも。
大事な兄として慕う存在の役職を奪う気にはなれなかった。
「マジかよ…じゃあ俺、義兄さんの役職奪っちまったのか?」
即座に、屍河狗威は、妃龍院憂媚の方に視線を向けると、役職辞退の胸を伝えようとする。
「龍神様、流石に、義兄さんの役職は貰えねぇよ…」
しかし、その言葉を止める手があった。
それは、妃龍院夜久光張本人である。
「いや…良い、狗威」
そう言われて、妃龍院夜久光は、正座のまま移動し、前に出る。
彼の言葉に、屍河狗威はどういう事なのかと首を傾げた。
「え?」
既に、妃龍院憂媚は理解していたのか。
彼の言葉に、頷いて屍河狗威を見た。
「そうじゃの…今回の審査会では、坊以外にも高騰した者がおる」
屍河狗威以外にも、存在価値が上昇した者が居る。
それは、先程の会話から察するに、ただ一人だけ該当していた。
「あぁ、俺だ…今回の審査会で、阿散花家の当主討伐によって大幅に存在価値が上昇した」
やはり。
妃龍院夜久光である。
彼の名乗りと共に、自分の存在価値、そして上がった後の額を口にした。
「前回は『二十四億五千万』だったが、今回で俺は『三十二億七千万』に高騰、これにより、母様から恩賞を賜る事になった」
前回の部分だけ見れば、確実に屍河狗威よりも低い。
しかし、今回の阿散花家の当主の首級を獲った事により、妃龍院夜久光は屍河狗威よりも高い三十二億にまで上昇していたのだ。
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