妃龍院家へ①
久方ぶりに妃龍院家の領地へと足を踏み入れる屍河狗威御一行。
嶺妃紫藍は自身の領土の守護の為に今回は不参加であった。
妃龍院家へと向かう事になったのは、屍河狗威と、その所有物である阿散花天吏。
そして、屍河狗威の配下として参列する事になった仮染貂豹の三名である。
「お前は、御当主様に逢った事があるのか?」
仮染貂豹は竹刀袋を掲げながら言った。
その中には、仮染貂豹の
「あぁ、とても若々しい人でな…メールでよくやりとりしてる」
そう言いながら、屍河狗威が思い浮かべるのは、妃龍院憂媚から送られて来る卑猥な写真だった。
極めて郷愁を感じる様な表情だが、実際の所は興奮しているのを隠しているだけだった。
そんな表情の機微を察したのか、隣に居た阿散花天吏が嫌らしい目つきで微笑んだ。
「何を考えているのかは知りませんが…みっともないので、他の方に見せないで下さいね」
彼女の言葉に、屍河狗威は目を向ける。
睨み付けて、主従関係をしっかりさせようとした。
「お前…あ?」
しかし、彼女はそっぽを向いた。
今までと同じ様に、反論しようともしなかった。
彼女の心に変化が起きているのが目に見えていた。
これではまるで、嫉妬しているかの様な言葉だった。
「(…面倒臭ェなぁ)」
屍河狗威はこれ以上彼女に構う事はしなかった。
近くに居た仮染貂豹に話をする事にした。
「お前の事だから、大体、御当主様にもそんな態度なんだろ?やめとけよ、上下関係はしっかりするべきだ」
「黙ってろ、俺と龍神様は特別な関係なんだよ」
中指を立てる屍河狗威。
その中指を掴んで思い切り折ろうとする仮染貂豹。
話の枠から外れてしまった阿散花天吏は、少し寂しそうな表情をしていた。
そうして話を続けていた所。
ようやく、妃龍院家の屋敷へとやって来た。
屍河狗威は、久しぶりに門を跨ぐと、頭を軽く下げた。
それは、彼なりの、自身が王と定める家系への敬意を称する行動であった。
「あぁっ、坊ッ!よく来てくれたの!!」
屋敷の前。
玄関先で待っていたのは、龍神こと、妃龍院憂媚であった。
屍河狗威の姿を認識するや否や、小走りで彼の下へと近付いていき、そして彼の胸元へと手を伸ばし、抱き締める。
暖かな抱擁、たわわに実った胸が、彼の胸板で押し潰される。
その感触を楽しみながら、屍河狗威は思わず笑みを浮かべた。
「っと、久しぶりっス、龍神様」
何とも、当主に向ける言い方ではなかった。
しかし、これが屍河狗威にとっての挨拶であり、妃龍院憂媚もその事に関して気にする事など無かった。
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