他勢力③


堕神家。

二人の青年が年代モノのファミリーゲームで遊んでいた。

レーシングゲームでもしているのか、白色の長い髪をした男は体を左右に動かしながら、ゲームの動きと連動している。


「へぇ、オージン、お前そんな高いんだなぁ」


報告書の内容を確認する、一人の青年。

晴下一と呼ばれる青年は、友人である堕神玄狼と遊んでいた。


「…俺のは、実家が忖度しただけだ、俺は何も凄くは無い」


そう言いながら、身体を左右に動かしている。

オレンジジュースを飲みながら、軽く指を動かして操作する晴下一が、相槌を打ちながら言う。


「そんな事ねぇさッ、なんか強いしなぁ、お前」


堕神玄狼の実力は、何となく理解している晴下一。

しかし、堕神玄狼は、この先に対する不安を感じていた。


「…晴下、おれはこれから、どうしたら良い?」


彼に今後の事を聞く。

すると、晴下一は首を傾げながら考える。


「あー?そうだなぁ…この間は、代理戦争で勝ったし…暴れ狂う祟りの神様も一人で斃したんだよな?うーん、中々、面白いイベントなんてものもねぇよなぁ…」


そして。

レーシングゲームでは、晴下一が扱うレーシングカーが単独一位で優勝をした。

ゲーム内のピクセルが派手な色合いで優勝者を称える文字を浮かび上がらせている。


「そういや…術師って、なんか知んねぇけど、土地を巡って戦ってんだよな?」


と、晴下一はその様に堕神玄狼に聞いた。


「あぁ…それが、俺達、術師の宿命だからだ」


嫌々しく思いながらも、堕神玄狼はそう説明する。

それを聞いて、成程、と頷く晴下一は、ゲーム機の電源を落として立ち上がった。


「そんじゃあ、先ずはそれを目指そうぜ、戦国時代の世から成し遂げなかった、術師による天下統一、やろうぜオージン」


そう言われて、堕神玄狼はゆっくりと頷いた。


「お前が…そういうのなら、それを目指そう、晴下」


晴下一が手を伸ばす。

その手を握り締めると、立ち上がる堕神玄狼。


「じゃあ…一先ずは…っと、約束から先に果たすか」


そうして、晴下一はカメラを取り出した。

狼狽える堕神玄狼は、口を紡ぎながらそれを見詰めている。


「動画配信して、金稼ごうぜッ!目指すは世界一の動画配信者だッ!!」


親指を立てる晴下一。

堕神玄狼は彼の行動に対して特に何も言う事は無かったが。


「(術師が動画に移るとモザイク処理が掛かる様になるから…動画配信者は不向きでは無いのだろうか)」


と、堕神玄狼は術師協会のプロテクトがある事を知っていた。

だが、気前良く行動する友の姿を見て、それを口に出す事は出来なかった。

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