他勢力①



一刀締家。

管轄下にあるカラオケボックス。

周囲の一般人が歌を発声する中。

明らかに、カタギでは無い輩の巣窟と化していた。


「この餓鬼ィ…若よりも高い額になりやがってェ…」


胴衣を着込む男たち。

その内の一人が報告書を見て憤りを覚える。


「だから言ったんだッ、金を詰んで十億程上げとけって!!」


別の男が叫んだ。

その声に反感して怒声が響く。


「それは若は嫌だって言ってたから止めたんだろうがッ」


睨み合う二人。

今すぐにでも殺し合いが発展しそうだった。


「じゃあなんだ?このクソガキ共が、若よりも弱いって言いてぇのか!?」


首を絞める様に胴衣の襟を掴む。

三十代後半を過ぎた男達の争いは鬼気迫るものがあった。


「んなワケねえだろうがッ!」


そんな二人などお構いなく、テーブルに置かれたフライドポテトを貪る若い青年が目を丸くしながら自分の考えを口にする。


「あッ!分かった!!」


二人が睨みを効かせながら叫んだ。


「何がだッ?!」


「この第二位は賄賂したんだ、考えてみたら、元一般人がこんなに高いなんてあり得ねぇからさッ!!」


青年の言葉を聞いて男二人は手を離す。


「ッ成ッ程ォ!!賄賂を抜きにした額だったら…十億か?十億程かァ!?」


納得した様子でそう叫んだ。


「だとしたら…十七億ッ!若の方が強い!」


マイクを握る。

声を大きく荒げて叫んだ。


「よっしゃああッ!!」


屍河狗威よりも若の方が強い。

そう確信して小躍りする男たち。


「しかしこの野郎ッ、なんて非道な真似しやがる…こりゃ、戦争だなッ」


報告書に記載された屍河狗威の写真に指を突っ込んだ。


「そうだッ、卑怯者は即刻ぶっ殺すに限るッ!」


屍河狗威を敵視する男衆。

このまま、戦争でも仕掛けて来そうな勢いだった。

その内の一人が理性を取り戻し、自分達だけで考えてはならぬと諭す。


「待て待て!!俺達だけで盛り上がっちゃダメだろっ、若、若の判断を仰ぐべきだッ!若ッ!!」


判断を仰ぐ。

羽織を着込んだ白のセーラー服を着込んだ若。

手には刀を持っていて、それを杖の様にして持っていた。


「…ぐぅ」


そして、彼らのバカ騒ぎなど聞こえておらず、眠っていた。


「ね、寝てる…」


そして男達は独自に解釈する。


「…成ッ程!!この程度の奴、歯牙にもかけないと言う意味ですかッ!流石若だッ!!」


狂喜乱舞。

即座にマイクを使い叫び出した。


「実質若の方が強い事が証明されたぁ!お祝いだお祝いィ!!」


片っ端からカラオケ店のメニューを使い、料理を頼んでいく。

一刀締恋理は、バカ騒ぎに反応する事無く、惰眠を貪っていた。


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