査定会⑤
屍河狗威の不満を聞いて。
彼女は心配するなと付け加えた。
「まあ、忖度だろうな」
忖度。
中立も金次第で評価を上げる。
それはある意味、術師の資産力も評価に入る、と言う名目がある。
あまり表立っていう事では無いが、金次第では評価が上がると言う事だ。
「本来ならば此処迄、査定額が跳ね上がるとは思えない」
報告書の内容を確認する。
屍河狗威以外の術師の上位四名は、先ず資産を投じて存在価値を高めているのだろうと判断した。
「貴様の本来の実力を評価されたが、曲りなりにも正統派の術師の家系、混ざりものの血筋である貴様よりも下である事は絶えられなかったのか」
術師の家系の一部では、一般人の血が混ざる事を嫌う。
極度の過激派であれば、術師至上主義として、術師を持たない全ての人間を見下し迫害するものも居た。
「それとも、術師として箔をつける為に、取引をしたかのどちらかだな」
どの様な行為であろうとも。
深く追求しても仕方が無い事だ。
中立に話を通した所で、守秘義務として一方的に話を打ち切られる。
むしろ、中立と言う絶対的法則を脅かす、不審と感じるのならば、処罰の対象になる可能性もある。
「だから、十大流王の一刀締家と黄河遠家は上位にある、御三家…
話に割って入る様に、阿散花天吏が情報を提示する。
「昔の存在価値の賄賂が流出した時、大体実力に上乗せして十億程だったので、十億を差し引いた存在価値が本来の実力、といったものでしょうか…」
そう言われて、屍河狗威は報告書に記載された名前を見た。
「ふぅん…」
自分よりも上にある名前。
其れが気になって仕方が無い様子だった。
「興味ないのですか?」
阿散花天吏が屍河狗威にそう聞いた。
興味が無いわけではない。
むしろ、自分よりも上の存在が気になって仕方が無い様子だった。
「いや…ただな、俺よりも上がいるって思うと、少し悔しいと思うわ」
彼の言葉を聞いて、嶺妃紫藍は言った。
「百億を超えて、ようやく中堅の部類になる、母様も百億は軽く超えているからな」
「へぇ…何億?」
屍河狗威が興味津々で聞いた。
彼女は答えようとした矢先。
「ん…」
彼女のポケットから振動していた。
携帯電話を取り出すと、嶺妃紫藍はどのボタンを押すか目を細めて考えた末、ようやくボタンを押して電話にでる。
「はい…母さま、どうかされたのですか?…えぇ、はい、っ、はい、わかりました…」
そうして電話を切る。
屍河狗威は嶺妃紫藍に聞いた。
「なんか、あったのか?」
「母様も、貴様の査定額を見たらしい、お祝いをしようと、そう言っていた」
それは、妃龍院家領土へ招く、と言う意味だった。
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