査定会④



「しかし惜しい…貴様ら、幾ら賄賂を受け取った?」


「術師査定会は功績と脅威、存在価値を分り易い金銭で表示するもの」


「それはある意味、術師としての箔にも繋がる、だからこそ、我々の評価は贔屓をしてはならない」


「御三家と呼ばれる術師の名家…、それが、元一般人よりも下など、それこそ贔屓では無いかッ」


「そうだ、これでも純粋な査定をしている…現に、本来食い込む筈だった十大流王が、元一般人よりも下になってしまった」


「幸いなのは御三家の方だ、あれが屍河狗威よりも下とすれば、契約を断たれる可能性もあるからな」


「御三家と言うだけで存在価値は跳ね上がる、少なくとも、十億の価値はあるだろう」


「…御三家は、単騎で術師の家系など潰した事など無い、むしろ…十大流王に繰り上げられ掛けた、幽刻一族を単騎で斃したあの男より、強い者などおるとは思えんがな」













「二十七億」


嶺妃紫藍の言葉に、屍河狗威は首を傾げた。


「ん?」


聞き間違いだと思った。

しかし、彼女は再度、屍河狗威に告げる。


「二十七億、四千万…それが、貴様の現在の存在価値と言う事になる」


指を使い、桁の数をかぞえる屍河狗威。

何度も何度も数えて、十億を超えた存在である事を確かめた末に。


「…それって凄いの?」


それがどれ程、偉業な事であるのかを聞いた。


「凄いなど…十大流王や、御三家を除けば、一か月程度で二十七億など…有り得ません」


元一般人が術師に成る事はある。

しかし、二十七億と言う存在価値は異例だ。

その事を踏まえて見れば、屍河狗威の存在は正しく異質に見えるだろう。


「この一年の間で億越えを果たした人物は、七人、その内、イヌは二番目に急上昇した術師だ」


報告書を見る嶺妃紫藍。


「…え?俺以外にも億越えしてんの?二番目って、一番目も居るのかよ」


気になっているのか、屍河狗威は報告書の中身を確認しようとしていた。


「あぁ…見てみるか?」


予め、コピーしていた報告書を屍河狗威に見せる。





第一位/堕神おじ玄狼くろう『三十億六千万』

第二位/屍河しが狗威いぬい『二十七億四千万』

第三位/一刀締いとしまり恋理れんり『十八億千五百万』

第四位/黄河遠こうがおん進什饗しじゅうきょう『十四億』

第五位/機士杖きしづえ祿謳ろくおう『七億五千六百万』

第六位/百足楽むかでら灼煉しゃくれん『五億』

第七位/晴下はるもとはじめ『二億三千万』






「おい、なんだこの第一位、俺よりも上って…」


自分が第二位と言う事よりも。

屍河狗威は、自分よりも上である男の存在が気になった。


「私も詳しい話は知らないが…御三家だしな」


と。

意味ありげな言葉を彼女は口にした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る