査定会②


査定会。

術師協会の最高顧問、二十一老衆。

現状、術師として活躍した人材を題材に存在価値を査定する。

評価は今後、術師の活動に左右される。

彼らは週に一度集まり査定を始めるのだが。

今宵は、十年に一度の豊作。

億越えとなる候補者の中から価値を定める日であった。


「やあやあどうも皆さん、お久しぶりで」


乾いた声が響く。

術師協会に属する二十一老衆。

名の通り、老いた老人が多い。

しかし、中には若い女性や男性もいた。

十二人中、六人が老人の集まりのようだった。


「それでは、まあ、術師の査定会を始めましょうか」


老婆が言う。

それぞれが席に着く。

机の上に置かれた茶を飲みながらゆったりとした会議だ。


参加者は十二人。

二十一老衆の内、過半数を超えている為、今回の査定は公式と認定される。


「億越え候補は現在七名、存在価値を決めていきましょう」


と、老人の言葉に、彼らは話し合いを始める事となる。


「十大流王の一刀締家、黄河遠家、御三家の墜神の子らは…まあ後に回して、残る四名の査定をしようでは無いか」




「『六銭売りの商人』討取られた術師の家財を買い取り、それを売却して生計を建てている百足楽家の長男か」


「金さえあれば、当主の座ですらも売る守銭奴主義の連中が、最近になって代替わりをした」


「新たな当主として玉座に就いたのは、百足楽むかでら灼煉しゃくれん


「ほう、当主の座はオークションだっただろう?確か…最後に更新を見たのは、約七百四十億だったか…最終的に幾らでその座に就いたのだ?」


「零円…オークション参加者全てが謎の死を迎え、競売者が居なくなった所で、最後に名乗りを上げた百足楽灼煉が入札、名乗り上げたと同時に、前任の当主は老衰したと聞く」


「陰謀だな、それで?この男の何を評価するつもりだ?」


「どうやって、オークションの競売者を殺したかは抜きにしよう、表向きでは、全員が原因不明の死となっている、術理によるものか、技能であるのか、判断が付かない」


「この男の実力は商人としての価値だろう」



「武器を両者の陣営へ売り込み、戦争助長の加担、自らは手を下さず、要人の暗殺を完遂、評価出来る事だ」


黄金の硬貨を投げる。

その硬貨は一枚につき一億の価値がある。


「爽やかな青年と言うのも、中々な好印象、彼のお陰で、術師による闘争は活発していき、術師統一と言う目標達成を加速させた」


黄金の金貨を一枚。

加えて、白銀の硬貨を五枚。

白銀の硬貨一枚につき一千万の価値がある。


「下らん、最低限の実力を見せず、他人の能力を引き出すだけでは、時代の覇者とは呼べん…」


赤銅の硬貨を五枚。

この硬貨一枚に百万の価値がある。


「うむ、そこら辺を加味すれば、この男の存在価値は大きい、今後の活躍次第では十億を超えるだろう」


「では、百足楽むかでら灼煉しゃくれん『五億』」


このようにして、存在価値が定められる。

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