花弄る

「くくく…我ながら天才だ」


屍河狗威は自室で笑った。

屋敷でせっせと働いている従士たちは、屍河狗威が「各々の判断で動く様に」と言った為に彼が居なくとも活動をしている。

その間、屍河狗威は自由時間となる。


「…」


そうして、布団を敷いた後に、彼女が現れた。

宿泊用の着物を着込んでいる阿散花天吏。

先ほどまで身を浄めていたのか、髪は濡れたままだった。

彼女は恨めしい程に視線を屍河狗威に向けた。


「部屋に来いと言われた以上、逆らえない…」


彼女は顔を紅くしている。

下唇を噛んで悔しそうな顔をしていた。


「ちゃーんと洗ったか?」


彼は彼女の体を舐め回す様に見る。

いくら綺麗にした所で、結局の所、また汚れるので意味は無いのだが。


「…失礼ですよ、きちんと洗いました、隅々、まで」


彼の質問に律儀に答える阿散花天吏。

杖を突きながら部屋に入っていく。


「(また…この男に、私の体は…)」


阿散花天吏は彼の部屋で抱かれる。

彼女は頭の中で屍河狗威に犯された事を思い出す。

痛みと恐れと恥ずかしさでそれ以外の感情など持てなかった。

またあの時と同じような事が起こる。

そう考えるだけで彼女の表情は段々と強張って来る。


「はッ、一丁前に緊張してんのか?可愛い所あんだな」


緊張する彼女に対して屍河狗威は彼女の腰を両手に回すと思い切り持ち上げる。


「あ、っちょ!」


持ち上げたまま屍河狗威は阿散花天吏を布団の上に乗せた。

そして彼女の上に跨る屍河狗威。

興奮しながら彼は彼女の浴衣を剥いでいく。

彼女の体が露わとなる。

真っ白な肌を見て屍河狗威は彼女に聞いた。


「おいおい…下着は?」


「…ど、どうせ、脱がすのでしょう?だったら…最初から、履いて着ませんでした。時間の無駄ですので」


これから屍河狗威に抱かれると聞いていた阿散花天吏は、どうせ脱がされるのだからその分の手間を省いたと言う。


「はぁ~…分かってねぇなぁ。脱がすのが良いんだろうが」


彼は残念がった、自分で脱がせるのが興奮すると言った。


「貴方の趣向なんて聞いて…んっ」


屍河狗威はそのまま阿散花天吏に口づけをした。

長い長い口づけだ。

優しく、浅く、強く、深く、唇や舌先を使って変容に咥内を愛撫する。

阿散花天吏は屍河狗威のキスに多少抵抗した。

だが、舌先から入ってくる熱に侵されて次第に抵抗する力が奪われていく。


「ん、ぷはっ…はぁ…はっ…はっ…」


すでに阿散花天吏が準備を完了していた。

嫌だと言っておきながらも彼女の体は屍河狗威を許している。

屍河狗威は笑いながら彼女の表情を指摘した。


「口では嫌がってるのに、もう俺の事を待ち詫びてるじゃねえの?こりゃあもうオチたろ?」


完全に本能に委ね、女としての表情を浮かべていた。

それを指摘すると彼女は顔を真っ赤にしながらも否定的な言葉を口にする。


「お、オチてませんッ!絶対、絶対にッ!!」


あくまでも落ちてはないとそう言っていた。












えぁ…んぁ…ちゅ…ちぅ…


んっ…   ぷはっ…ぁっ…


どう、ですか、私の唾液は…蜜のように甘いでしょう?


術理による効果ですとも、蜂蜜術理、体液を蜜の様に甘くする事も出来るのです


ふふ、指も、足も、からだの全て、蕩けるでしょう?


私の蜜に、舐め狂えばいい…っひぅっ?!


ど、どこを舐めても、と言いましたがっ…そんな、わき、なんて、このっ、変態っ!ひぁっ。


こ、んどは、へそ…やめて、ください、そんなとこ、…ぴりぴりしてきて、いや、だからッ…


んっ…そ、そう…最初から、そこだけを舐めておけば良いものを…


なんどもなめて、まるで、本当のイヌのよう、っふぁッ


きゅうに、かむ、なんて…っぁッ、どこをかんでッ


なんども、そんなっ…くッ…いつ、いつまでも、下手に出ると思ったら、大間違いですから…


こんどは、私が…貴方を、絞り尽くしてあげます…っ


















何度も何度も。

時間を忘れる程に遊びつくす。


「もう、終わりですか?」


彼女は息を切らしながら言った。

烈しい運動の最中、感情が昂り過ぎた後。

へたりこんでしまった彼女は、挑発する様に屍河狗威に言う。

彼女の挑戦的な言葉に、そんな筈は無いと笑みを浮かべる。


「まだまだこれからだっての…もっと喘がせてやるよ」


近くに飲料水を置いていた。

それを取って水分補給をしようと暗闇に手を伸ばした時。

何か、暖かな感触があったので、手で触れてなんであるかを確認した時。


「ひっ」


上に跨っていた阿散花天吏は悲鳴を口から漏らした。

何か、嫌な予感を浮かべている屍河狗威は、恐る恐る、上の方を見上げる。


「イヌ」


名前を呼ばれる屍河狗威。

暗闇で名前を呼ばれて、彼は内心で驚き、冷や汗を流す。


「ど…どうも、紫藍ちゃん、あっれ?一日中、尋問で手が離せなかったと言ってたっけ?」


屍河狗威は可笑しいと思いながら彼女に聞く。


「私の手から離れた途端にこれか、飼い犬に手を噛まれた気分だ」


言い返され、冷めた目つきで彼の首根っこを掴んだ。


「今は良い、後で説教をしてやる、それよりも…貴様が必要だ、さっさと来いッ!」


そう言われて引っ張られる屍河狗威。


「いててッ!せ、せめて下着をッ」


そう言いながら、屍河狗威は阿散花天吏の手首を掴んだ。


「な、わ、私は関係ないっ」


胸元を隠す阿散花天吏。

流石に、廊下で裸になりながら歩かせるワケには行かなかったのだろう。

冷静になった嶺妃紫藍は、屍河狗威に衣服を着込む時間を与えた末に、屍河狗威は彼女と共に歩き出す。

元・阿散花家の屋敷は入り組んでいる。

廊下を歩き、地下に該当する屋敷の最下層へと移動すると、部屋があった。

座敷牢と言うものだろう、木で出来た檻の奥に、縛られた創痍修略摩の姿があった。


「連れて来たぞ、創痍修」


創痍修略摩は、前髪の隙間から、屍河狗威の顔を見た。

サングラスを掛けて無いので、本当にそれが屍河狗威であるのか定かでは無かったが。

その軽薄そうな表情から、彼が本物である事を察した。


「…屍河狗威、さっきの、奇襲に関しての非礼を詫びさせて欲しい」


と、屍河狗威に頭を下げる。

それを聞いて屍河狗威は首を傾げた。


「は?非礼?奇襲?俺、何かされたっけ?」


最早、屍河狗威は、彼が行った襲撃に関してすら、それを攻撃だと認識していなかった様な素振りを見せた。


「…敵わないな、…貴方を此処に呼んだのは、貴方にお願いがあるからだ」


と、そう言った最中。

嶺妃紫藍が話の間に割って入る。


「おい、なんだその話は、今回の奇襲に関して話をするから、イヌを呼んで来いと言ったのではないのか?」


彼女の言葉に、創痍修略摩は頷く。


「その通りです…先に、そのお願いをする前に、話をしましょう」


嶺妃紫藍の言葉を思い出して、彼は何故、屍河狗威を攻撃したのかを説明する。


「便宜上、俺達は同盟として結託し…屍河狗威を闇討ちしようとした」


創痍修略摩は、屍河狗威の顔を思い浮かべながら言う。

俺達、とは、七つの術師の家系、その当主たちが勢揃いで屍河狗威を狙った、と言う事だろう。


「そうだ、何故貴様は、イヌを狙った」


嶺妃紫藍は、七つの同盟を結んだ時点で、戦争と言うカタチでは無く、屍河狗威を狙った事に関して疑問を浮かべていた。

少なくとも、同盟を結んだ家系ならば、戦争として争えば、優勢のまま進める事が出来るのではないのか?と思っている。


「…俺達は、捨て駒だ…屍河狗威と言う男の力を知る為に」


「捨て駒…だと?貴様らは、当主なのだろう?」


まだ、同盟した当主が彼の情報を知る為に密偵を出す事は理解出来る。

だが、当主とは、その組織の要にして長だ。

自ら命を捨てる様な真似が、どうして出来ようか。


「…それは、俺達が、邪魔だったからだ、頭を失えば、別の頭が支配出来る」


「どういう意味だ?」


「簡単な話ですよ…俺達は捨て駒、それも存在していれば邪魔な存在、そもそも、同盟は正式上に結んでいるものであり…その本質は、奴隷の様なものだった」


段々と浮き彫りになってくる。

屍河狗威は其処で成程、と納得した。


「ようするに、お前ら、操り人形か」


「…そうだよ、屍河狗威、あんたはこれから、引き抜かれる…その準備の為だけに、俺達は命を賭したんだ」


引き抜き。

在籍する組織を裏切り、別の組織へと介入する事。

屍河狗威を、引き抜く為だけに、多くの有能な術師が命を落としたと言う訳だった。


「誰だ?どの人間が、こんな真似を画策した?」


嶺妃紫藍の質問に、創痍修略摩は答える。


「…土塊紅つちくれない家」


その名を聞いて彼女は奥歯を噛み締めた。

屍河狗威は、彼女の顔を見て質問を行う。


「なんだよ、そいつ、どんな組織なんだ?」


「代々、傀儡を操る家系だ…実力は其処まででは無いが、黒い噂は聞いている…他家を武力制圧では無く、弱みを握り支配し、奴隷の様に扱っていると…あまり表立って行動している事は無く、あくまで噂程度のものだった…隣接している家系では無かったから、重要視する程でも無かったが…」


創痍修略摩は歯軋りをした。

そして、彼女の説明に対して噛み付く。


「そうだ、その通りだ、噂が表立って出ない様に根回しをしていた、入念に、俺達に噛み付き、毒を仕込んだッ、その結果、俺達は土塊紅家に逆らえなくなった…そのせいで…」


涙目を浮かべる創痍修略摩。

項垂れながら、彼は悔しそうに言った。


「俺の、母親も、奴等に夜な夜な、相手をする様になったんだ…」


心苦しい事を告げる創痍修略摩。

それは即ち、その身を、不本意ながら土塊紅家に捧げたと言う事だった。

















次回未亡人編

モブ姦増しでお送りします

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る