第46話 ノヴァが落ち着く場所
ある時期からティナとノヴァは一緒に行動することが増えてきた。ノヴァは以前と違ってつんつんするところが無くなり、特に年下のティナとは良く話をするようになった。ティナの相棒、子猫のデイジーもノヴァに良く懐いた。
その日は二人で巨大な蜘蛛型のフォルフを退治しており、何とか本体は駆逐したが、ティナが強力な蜘蛛の巣に捉えられていた。
ノヴァが特殊なナイフで一本一本頑丈な蜘蛛の糸を切っているところだった。
「ごめんね」
ティナがノヴァに言う。
「ううん、この糸強粘着なのよね」
ノヴァが首を振り、淡々と糸を切り続ける。
「ノヴァさんって、将来ガーディアンになるの? マークが前にノヴァさんはすごい能力があるからガーディアンにスカウトするって言ってたよ。もうスカウトされたの?」
「うん、少し前に。デクラークに行ってきた」
ノヴァはティナには何も隠すつもりは無かった。糸切り作業をしながら淡々と話す。
「それで? 決めた?」
「決めた」
「わあ、すごい。仲間ね」
「いえ、だけど前線には出ないんだ」
「あら、そうなんだ」
ノヴァはSOFを引退すること、ガーディンアンにはなるがスポットで働くことにして、通常はエルシアの住民として生活することを伝えた。そしてその理由として、戦いに明け暮れる生活はもう止めにしたいこと。貴重な十代の時間を取り返したい事を話した。
「これで終わり」
最後の糸を切って、ティナは自由の身になった。
「ありがとう、ノヴァさん」
「ちょっと地上に降りようか」
「ええ」
二人は湖のほとりにふわりと降りた。陽がかなり傾いてきている。
「ノヴァさんの気持ちはわかる。いや私はまだそんなに長くやってないけど、この仕事って神経をすり減らして、自分を犠牲にしてばかりだもんね」
「そう。私気がつかなかったの。知らない内に心が消耗しているって」
「ノヴァさん、実は私も早く引退することを決めてるの。早くって言っても百年後だけどね」
「ティナは長生きだもんね。あ、でも私も寿命は長くなるみたい。ソフィアさんが言っていた」
「パートと言えどもガーディアンだからね。それからなんと私もエルシアの住民になるんだ!」
ティナは嬉しそうに言った。
「わあ、一緒だね。近くに住めるといいね。もしかしてマークも?」
ノヴァも喜んだ。知り合いがエルシアにいるというのは素敵だ。ティナはマークの名前が出て照れた。このころはティナがマークにぞっこんというのは周知の事実だった。
「うん、約束した……」
真っ赤な顔でティナが答えた。
「あの野郎、こんな可愛い子をついに射止めやがって」
ノヴァがまるで幼馴染の悪ガキの事を言うかのように言った。
「うん、捕まっちゃった」
「くーっ 熱いぜ」
ノヴァの顔も赤くなってきた。
「ノヴァさん、ぜひ近くに住んで! マークは女性関係が怪しい人だから二人で見張らないと」
「それはお安い御用よ」
「でもティナは百年先か~ 長いな」
ノヴァはティナと一緒になるのが百年後だと思っている。しかし……
「ノヴァさん、あの、私百年たったら、今から五年後のエルシアに戻ってくることになってるの。つまり……五年だけ待ってくれればいいの、ただし私の見た目年齢は二十才くらいにはなってるけどね」
「え、本当? たった五年でいいの? しかも私が二十四才だからあまり変わらない……」
ノヴァの顔がパッと明るくなった。
「いいえ、ノヴァさん、ガーディアンはなかなか老けないのよ。だからノヴァさんの方も五年経っても、ほぼ今の十九かせいぜい二十よ」
「という事は……見た目ほぼ同い年だ!」
「そういう事」
「「いいね!」」
二人は同時に叫んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます