第44話 EP3 ノヴァとティナ

 エピソード3 ノヴァとティナ


 ガーディアンの末っ子ティナ。史上最年少でスカウトされた女の子。特殊能力の習得が好きで、マニアとも言える。運動能力が高いとは言えないが、その代わり数々の技で見方を救い、住民を救ってきた。


 最初に手助けをしてくれたマークの事が好きになり、ついには婚約してしまった。百年経過するとティナは自分の実年齢を15才から25才くらいの間で自由に選んで設定できる。


 ソフィア達との協議で、百年経ったらマークと一緒にエルシアに来てから5年の時点にタイムリープし、そこで普通の二十才のエルシア人として暮らしながら、時々ガーディアンの仕事をスポットで請け負う形にした。


「これから百年、たぶんあっという間。早く来ないかな……」


 ティナはそんな事を呟きながら今日も空を飛ぶ。 一方、サードワールドの特殊部隊、SOFの最強女戦士ノヴァ。弱冠十二歳でデビューし、七年に渡り前線の兵士として活躍してきた。


 ミア達新米ガーディアンが来てからは、一緒に活動することも増えた。ノヴァの実力を認めたマークは彼女をガーディアンに中途採用すべくソフィアに紹介した。


 一方、そのノヴァは、実のところ兵士は引退したいと考えており、マークの推薦にも渋々応じたような様子であった。



 ――デクラークWCA支部



 白い部屋にソフィアがいる。メイドのメリルに案内されたノヴァが部屋に入る。ノヴァは兵士ならではのポーカーフェイスでソフィアを見つめる。


「ノヴァです。参りました」

「WCAにようこそ。支部長のソフィアです」


 ソフィアはぱっと見た目、物腰の柔らかい貴婦人のようなたたずまいのお姉さんと言った感じであるが、ノヴァはひしひしと感じ取っていた。ソフィアの真の力を。


(この人、只者ではない。マークなんかよりよっぽど迫力がある)


「やーね。初対面で化け物扱いはやめてちょうだい」

(はっ、こいつ心を読めるのか?)

 ノヴァは冷や汗が出てきた。


「これでも一応、女神のトップですからね」

「はっ! これは失礼いたしました」

(これじゃあ、迂闊な事考えられないぞ)


「ノヴァちゃん、大丈夫よ。そんなに緊張しなくても。心を読むのは止めてあげる」

(こいつ、嘘だ)

「ははは、嘘じゃないって」

「読んでるじゃん!!」

 ノヴァが真っ赤になる。


「あら、ごめんなさい。読むつもりは無いんですけどねえ」

 ソフィアは笑い転げている。


「ああ、おかしい。じゃあお話始めましょ」

「むう……」


「ん、んん。ではっ、ノヴァ。マークの報告によると、あなたはまだ若いのにサードワールドのSOFのトップとして長年働いてきて――、その腕前も抜群だと聞いたわ」

「いえ、それほどでもありません」 


「エルシアのガーディアンはまだ3人しかおらず、その内ティナも百年でフルタイムを卒業してしまいます。つまり、中途採用を募集してるんです。ぜひあなたにガーディアンになってもらいたいの。ガーディアンの仕事はわかってるわよね? それからそのメリットも……」


「まあ、大体は……」


 ソフィアはその透き通る様な目でノヴァを優しく見つめた。ノヴァはその瞳に取り込まれそうになり目を反らす。


「どうかしら?」


 ノヴァはまだ二十歳にもなっていないにも関わらず長期の兵士経験を経ており、細身で引き締まった筋肉質の体をしている。兵士独特の鋭い目つきで答えた。


「私なんかを選んでくれて、とてもありがたいのですが、実は……」


 ふと視線を窓から見えるデクラークの風景に移した。


「私、もうそろそろSOF(特殊部隊)を引退、いや軍そのものも辞めようと思っているんです」


「あら、なぜ?」

 さすがにソフィアも心を読むのは一旦止めた。


「私、長い間、人の為に必死に働いてきました……そう24時間、365日、SOFの活動の事しか考えて来ませんでした」


「すごい活躍をしてきたわけよね。SOFのトッププレイヤーとして」


「で、ふと思ったんです。私には普通の女の子が十二才から十九才の間に経験すること、考える事、それらがすっぽり抜けてるんだなあって」


「……」


 ソフィアは遠い昔、自分が十代だった頃を少し思い出し比べた。さすがにノヴァほどストイックな生活はしてはいなかった。(遠い昔は余計よ……!)


 うん、言っていることはよくわかる。気がつくのが遅すぎるほどだ。スポーツ選手と一緒だ。優秀な選手ほど、通常生活が犠牲になる。ノヴァはその極端な例だろう。

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