第33話 サードワールドの戦士 カイとノヴァ

 サードワールドからの戦士、男と女の二人にマークが声を掛けたところ男の方が口を開いた。


「何か用か?」

「フォルフを退治してくれてありがとうよ。少し話をさせてくれないか?」


 マークが言うと、男が女に何か相談したようだ。女は渋々という表情でコクリと頷いた。すると女の許可を得た男がマークの方を再び向いた。


「ああ、構わない」


 戦士とマークはルカ達のところに飛んできた。よく見ると二人ともルカ達とほぼ同じくらいの歳のようで、男は剣を持ち、女は剣とさらに銃を下げている。


「俺はマークと言う、元ガーディアンでここエルシアの出身だ。こちらの三人はやはりこれからエルシアの守護神となる連中だ」


「ミアです」

「ルカと言います」

「ティナです」


 各々が名前を告げた。

「そして、こちらがアイリス」


 アイリスが戦士達を見てにっこり笑った。

「お二人の噂はかねがね聞いています。よろしくね」


「良かったら君達の名前を教えてくれないか?」


 マークが尋ねると男は迷いもせず言った。

「僕はカイだ。こっちはノヴァ。僕らはサードワールドのSOFだ」


 ミアがティナに訊く「SOFって何?」

「特殊部隊ですよ。Special Operation Forces」


 マークがカイに訊いた。

「なぜ、エルシアに来るフォルフを退治してくれているんだ?」


「有害だからですよ。わかるでしょう? 地球のサードワールドは良くも悪くも銀河系のハブの一つです。色々な星とハイパーリンクで繋がっているため、あらゆる外来生物、外来物質が紛れ込みます。私達はWTA、世界貿易協会の命を受けてフォルフの往来を極力阻止しています」


「WTAがらみか。俺達の仕事と少しかぶっているな。WCAは知っているか?」

「もちろん、WCAは言わば正規軍のようなものです。WCA本部の人達とは時々連携していますよ。私達は特殊部隊なのであまり表には出ません。隠密行動が基本ですから」


「そうか、それならエルシアが一年前からWCAの直接管理を外れブルーソースが制限されたことも知っているな」


「ええ、レッドホールが多数出現し始めたので、僕らも忙しくなりました」


 ノヴァがしびれを切らして言った。


「カイ、おしゃべりはそれくらいにして。もう帰るわよ」

「ああ、わかった。それじゃあみなさん」


 ノヴァが先にすたすた歩き始め、カイがそれに付いて行こうとした。そこでマークが余計な一言を言った。


「お嬢ちゃん。可愛い顔して冷たいねえ。そのおしりはキュートだけどね」


 隣にいたティナがマークの足を踏みつけたその瞬間、ノヴァの姿が消えた。

 そして次の瞬間、マークの首から血が少し垂れて来た。気が付くとノヴァがマークの目と鼻の先にいた。既に刀を一閃した後で下からマークを上目遣いに睨んでいる。マークは瞬時に後退して間一髪刀をかわしたのだったが、わずかに首にかすった様だ。


「早すぎるな、君。いきなり殺そうとするなよ。ちなみに俺はどうやっても死なない体だけどな」


 マークはそう言いながら、上級ガーディアンズの眼に戻り、瞬間的に刀を出してノヴァの腹を突こうとした。


 しかし、その刀はノヴァの白い腹の手前で腐食し、役立たずとなった。


「何だこれは?」

「知る必要無いわ」ノヴァが答える。


 それから数秒間、マークとノヴァが高速の一騎打ちを行った。


 ミアが叫んだ。

「いい加減にしてっ! 『ウォール!』」


 二人の間に透明な壁ができた。向かい合った二人の刃が壁を同時に突いたが、壁はびくともしない。


「ノヴァ嬢ちゃん、なかなかやるじゃないか」


 マークはにやりと笑ったが、ノヴァは無表情で髪をかきわけた。そして無口のままカイと一緒にサードワールドへ去っていった。ティナがマークを怒る。


「マーク! 危なかったじゃない。なんであの子にちょっかい出すのよっ」

「いやあ、まいった。あの子は尋常じゃないよ。ジーンとはまたタイプが違うが、戦闘能力は間違いなく一級品だ」


 アイリスもクレームをつけた。


「もう、止めてよね。対フォルフという意味では仲間じゃない。喧嘩するのはよして」

「いや、喧嘩を仕掛けたつもりは無いんだが」


 ミアが諭した。


「マークさん、初めて会った女性に容姿のことをあれこれ言うのはご法度ですよ。セクハラに当たります」


「そうか。褒めたつもりだったんだけどなあ」

「今の時代ではそんなの通用しません」


「そうか、でもあの後ろ姿良かったなあ、本人がいなけりゃ言ってもいいよな」


 ティナが至近距離からマークに電撃を見舞った。


 黒くすすけた顔でマークが最後に呟いた。


「悪かった。ごほっ」

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