第7話 女たらしのマーク

 そこでヨギが割って入ってきた。


「まあまあ、ソフィアさん。あなたも前回はエルシアのスカウト担当だったじゃないですか? 随分美男子ばっかり選んで、中身が今一つで」


 ソフィアが慌てた。

「な、何を言うんです」


「君が選んだのは、そこにいるマークやらアンタレスやら顔だけが良くて使えない男ばかりだったようだが」


 ソフィアが切れた。

「そこの減らず口の年寄り! 黙りなさい! 今はアイリスの話をしているんです」


 マークも補足した。

「そうですよ、ヨギさん。私が使えない男なんて、失敬な」


 アイリスはにこりと笑った。


「議長、ありがとうございます。ソフィア、動画を撮ったのは申し訳ありません。今回は確かに身近な者を選んだものの、分析はそれなりにしております。TJによりますと三人ともなかなかのポテンシャルを秘めているとのことです。特にミアという女の子は歴代ナンバーワンの数値が出ていますので、ご期待ください。ねえ、TJ?」


 TJは時間管理の他にアナリストの仕事もしている。


「ええ、まあ。私が分析したところでは、『偶然』ですがアイリスは随分いい素材を拾ったようです。他の二人もユニークな特徴があって今後の育成次第かと思います。」


 アイリスがTJをたしなめてからソフィアの方を向いた。

「TJ、偶然、は余計よ。ソフィア、昔と違ってAIとか文明の利器があるので、効果的に優れたガーディアンに育てますのでご安心ください」


「あなた達がそこまで言うならまかせるわ。でも――」

(この地区の評価を挽回しないと)ソフィアはそう思ってマークの方を向いた。


「やっぱりこの三人だけだとまだ心配。ミッドガルドの二の舞は踏みたくないわ。マーク、あなたもサポートチームに加わってくれない?」


 余裕の表情でくつろいでいたマークがコーヒーを吹き出し咳込んだ。


「何い? 何で俺が? おいおい待ってくれよ。俺はプレーヤーを引退してから三千年も経つんだぜ。悠々自適の専従委員生活を満喫していたのに、また現役復帰かよ。勘弁してくれよ」


 ソフィアがなおも説得する。


「エルシアがまた第三世界の干渉を受ける。あなたの故郷がピンチになるのよ。(私の評価もこれ以上下げたくないし)私が見込んだあなたなら、きっとうまくやってくれると信じているのよ。どう?」


「嫌だね。新米ガーディアンのおもりなんて御免だね。どうせ俺に泣きついてきてばかりになるんだ。結局苦労するのは俺一人になることは目に見えてるよ。それから――本音が聞こえているぞ、私の評価が何だって? 全く」


 ソフィアは少し思案した。


「マーク。じゃあ、特別にオプションのご褒美をあげる。あなたは風紀管理委員会から女性交際禁止令が出されているわよね。千年間だっけ? それを百年間だけ特別に解除してあげる。どう?」


 マークは根っからの女たらしで、守護神ガーディアンのくせに過去散々女性問題を発生させたため、処罰を受けている身であった。


「何? それはいいところを突いてくるな、でもたった百年かよ、ソフィア。ちょっと考えさせろ」


 マークは腕組みをして目を瞑り考えた。

 そして目を開くと言った。


「二百年ではだめか?」

「だめです」


「うーん、交際相手はエルシアの女性でもミッドガルドでもいいのか?」

「誰でもいいわよ。でも二股とか不純異性交遊とか、そう言うのはだめよ」

「二股はだめか。三人以上はいいのか?」


 アイリスが言った。

「いいわけないでしょ、バカだねこいつ」


「一人だけか……」 マークしつこい……


 ソフィアがしびれを切らしてきた。

「嫌ならいいのよ。他のメンバーにあたるわ」


「いや、待て待て。うーん、仕方が無い。ゼロよりはましか。よーし引き受けるぞ」


 提案したソフィアだったが少し呆れた。

「あなた、本当に女に目が無いのね」


「いや、そんなことは無いぞ。俺は故郷エルシアを守るために立ち上がるんだ」


 一同は白けた。その後、ヨギが残りの議事を進行し、結論までつけた。


「では、みなさん。地球の管理切り替えは三日後ね。ブルーソースの切り替え作業をやるので来れる人は来て手伝ってください。それからアイリス委員とマーク委員は守護神候補のトレーニングをよろしくお願いしますよ。きっちり育成してエルシアに送り込んでください。ソフィア支部長、上層部への報告をよろしくお願いします。みんなの給料が減らされないようにミッドガルドの状況はうまく弁解しておいてください」


 委員会は散会となった。

 会議室から出て歩いているマークにアイリスが話をした。


「マーク、これからよろしく。それで早速なんだけど一週間後にミッドガルドの候補三人を集めて、顔合わせと今後の予定を話すの。私が二人を案内するから、マークにはもう一人を現地に連れて来てくれない? まだ子供よ」


「子供をスカウトしたのか?」

「十歳くらいの女の子よ。手は出さないでね」

「ばかいえ、未成人に手をだしたりするか。俺はロリコンじゃない」


「二十歳以上もだめよ。人間で気に入った人がいたらまず私に言って」

「アイリス、何だよ、警戒しすぎだろ」


「最初が肝心よ。チームに集中して頂戴」


 マークは無表情で答えた。

「わかったよ。最初の内は自粛しておくよ」

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