[先生]
「
早苗の塾の先生が英美と同じように一夜で変貌していたという話を聞かされたあと、その事態の原因を"悪魔"と結びつけたのは何故なのか? という美鈴の問いに対し、早苗は聞き慣れない言葉を口に出した。
「神智学? わからないけど・・・・」
「まあ、そうだよね、私も知らなかったし」
「それが何か関係あるの?」
「うん、実はたまたま親戚の中にその学問というか分野を個人的に研究してる竹居さんて人がいて、世の中の神秘とか幻想とか神とか悪魔とか? 詳しくはわからないけどそっち系の知識が豊富みたいでさ、先生の家の中を見てすごいギョッとしちゃってて」
「え、入れてくれたの? だって前の日『入るなー!』て言ったのに?」
「そうなんだけど・・・・いなくなったのよ」
「いなくなった?」
「そう。別人が出てきてみんなが『誰?』ってなったら『御無沙汰してます』って親戚の人ひとりひとりの名前ちゃんと言ってから『失礼します』って歩いて行っちゃって」
「え、それ、誰か引き留めなかったの?」
「だって元の先生よりずっと若いし顔もぜんぜん違うから、全員ポカン状態よ。今の誰?って」
確かにその感じは美鈴にも理解は出来た。
元とは似ても似つかない顔の人物が唐突に現れれば一時的に思考が止まる。
「じゃ、出て行ったから母屋の中に入ったわけね?」
「そう、とりあえず竹居さんがね、あとの人たちはけっこう高齢者だし。ついでに私もパス」
「あ、匂い?」
「うん、家の中に充満してた」
「そうなんだ・・・・それでその竹居さんが何て──」
「あいつとんでもないことしたな、悲惨なことになるぞ、って」
「とんでもないこと!?」
その言葉の響きで美鈴の脳裏に浮かぶ英美のシュンリン顔。
とんでもないことでもしなければその先生にせよ英美にせよ、一晩で顔を完全に変えられるわけがない。
そしてそのとんでもないことが招く悲惨な事態。
英美の母、咲子の狂変と燃えた家──どろどろとした黒い恐怖に侵食されるような感覚に美鈴は表情を凍らせた。
「その人、先生の
「え、召喚!? てあのアニメとかに出てくる──」
「そう。魔方陣があったって」
「ええーっ」
自分は今、いったい何を聞かされているのか・・・・立て続く衝撃に美鈴は強い脳内疲労を感じ、同時にこれ以上踏み込むことへの不安と抵抗感をも感じ始めていた。
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