[反響]
想像以上の反応反響だった。
"元の英美"を知る誰もがその変貌に驚愕し、そして質問責めにした。
『いくらかかったの? いくらかけたらその顔になるの? クリニックはどこ?』
正面から直球の問いを投げ掛ける者もいた。
けれど本人がそれを否定し美鈴も昨日会っていたことを話すと取り囲んだ皆は一様に困惑の表情になった。
当たり前ながら、一夜での激変をどう理解、信じていいか分からないという脳内混乱の様子がありありだった。
(そりゃそうだよね・・・・)
引き気味に心で美鈴は頷いた。
その時、ふいに服の袖を誰かが引っ張る感触がし、美鈴は小さく振り向いた。
「ちょっと・・・・いい?」
「え?」
同じ学部の緑川早苗がそこにいた。
そう親しいわけではないが、入学時のオリエンテーリングのグループ分けで一緒だったことから会えばそこそこ話をする仲だ。
「話があるんだけど・・・・」
「話?」
「うん、あの子のことで」
あの子、と、皆に取り囲まれている英美にクイっと顎先を向け早苗は意味深な目付きをした。
「今?」
「うん、出来れば・・・・」
「ん・・・・わかった、いいよ」
「じゃ、ちょっと外に出よう」
英美に一言声を掛けようかとも思ったが、
それよりも早苗の様子からとりあえず先に話を聞いた方がいい気がし、美鈴はその場を離れた。
校舎を出た所で早苗は辺りを見回し、花壇の方を「あそこにしよう」と指差した。
園芸サークル部員が常に手入れをしているため四季折々の花々が綺麗に整えられている癒しのエリアだ。
その隅の誰もいないスペースまで行くと早苗は足を止め、美鈴に向き直った。
「最初に聞いておきたいんだけど、オカルト系って信じる
「え、え? オカルト?」
早苗の唐突な問いに美鈴は面食らい思わず目を見開いた。
けれど早苗は視線を外さずじっと美鈴の目を見ている。
「ん~、まあ説明のつかない不思議なことはあると思ってるけど・・・・」
「それ。まさに説明のつかない不思議なこと、だよね? 彼女」
「あ・・・・英美?」
「そう。あの顔、説明つかないよね?」
「確かに・・・・昨日はいつも通りだったからすごい驚いたし訳わからなすぎて──」
「大変なことになるよ、たぶん」
「え? 大変? どういうこと?」
一気に低音口調に変わった早苗に美鈴は一瞬ビクッとなった。
「ヤバいモノに関わった、ってこと。関わったら最後、てやつ」
「ヤバいモノ? 何それ」
「・・・・」
「ねえ、どういう話? 最後って?」
「・・・・信じる信じないはあなた次第、てことで言っちゃうけど──」
「うん」
「彼女・・・・アレと契約した。間違いない」
「アレ? って?」
美鈴が聞き返すと早苗はひとつ深呼吸をした。
そして意を決したように口を開き、言った。
「悪魔」
「えっ?!」
想定外の言葉に一瞬にして場が凍りつく感覚。
美鈴は今、それを実感した。
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