Day25 カラカラ


 カラカラ……。

 軽々とした音をたてて、風車が回る。

 山間にあるその小さな集落には、子供が七つになるまで、辻堂の茅葺屋根に風車を刺す風習があった。


 子供の無事の成長を願って、赤い風車を――。

 子供の魂のなぐさめに、白い風車を――。


 かついては、屋根にぐるりと花が咲いたように赤い風車が並び、その隙間にひっそりと白い風車が混じっていたが――静かでのどかであることしか持ちえない集落は、この四十年程に加速された過疎化に抗うことはできず、風にまわる風車もまばらになって久しい。


 カラカラ……。


 乾いた音をたてる風車は、もう何年も白い――。

 既に、住む人もいなくなり――辻堂の屋根も崩れ始めているけれども……。


 カラカラ……カラカラ……。


 白い風車だけが、ひっそりと――数を減らしつつ……入れ代わり――入れ代わり……。


『放しはせぬ…ぞ……』

 風に乗る声を聞くものも正体を知るものもなく――。


 カラカラ……。


 誰も訪れることのない、傾いた空き家ばかりの集落の辻で――白い風車は、回り続ける。



 いつか、一本の風車も立つことのなくなる日まで……。



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