Day25 カラカラ
カラカラ……。
軽々とした音をたてて、風車が回る。
山間にあるその小さな集落には、子供が七つになるまで、辻堂の茅葺屋根に風車を刺す風習があった。
子供の無事の成長を願って、赤い風車を――。
子供の魂のなぐさめに、白い風車を――。
かついては、屋根にぐるりと花が咲いたように赤い風車が並び、その隙間にひっそりと白い風車が混じっていたが――静かでのどかであることしか持ちえない集落は、この四十年程に加速された過疎化に抗うことはできず、風にまわる風車もまばらになって久しい。
カラカラ……。
乾いた音をたてる風車は、もう何年も白い――。
既に、住む人もいなくなり――辻堂の屋根も崩れ始めているけれども……。
カラカラ……カラカラ……。
白い風車だけが、ひっそりと――数を減らしつつ……入れ代わり――入れ代わり……。
『放しはせぬ…ぞ……』
風に乗る声を聞くものも正体を知るものもなく――。
カラカラ……。
誰も訪れることのない、傾いた空き家ばかりの集落の辻で――白い風車は、回り続ける。
いつか、一本の風車も立つことのなくなる日まで……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます