Day13 定規
「背筋をしゃんとなさい!」
祖母は、厳しい人だった。
箸や鉛筆の持ち方がおかしいと、筋張った手でピシャリと叩かれ、足を崩して座っているのを見つかれば、やはりピシャリとすねやふくらはぎを叩かれた。
小学生のころなど、机に屈み込んで宿題をしていると、姿勢が悪い……と――また、ピシャリと叩かれたうえに、裁縫用の長い竹尺を服の背中に突っ込まれたりなどもした。
そして、厳しいだけのことはあって、重ねた年齢のわりに祖母自身、お作法の見本のように所作や姿勢の美しい人だった。
そう、確かに――美しかったのだ。叱られても仕方ないと思わされ、高みはそこにあるのだと感じさせられるほどに。
晩年の祖母は、物忘れこそ多少増えはしたもの――最期まで、毅然と背筋を伸ばして美しいままでいた。
葬儀を終え、父が炉の点火スイッチを押し――時間が来て、お骨拾いの場へと促される。
しかし、まだ温かい台の傍らに立つ担当職員は、ただ呆然と立ち尽くしていた。
横たわる、祖母の骨は――磨き上げられた、金剛石だった。
やはり、祖母は美しかった。
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