Day8 雷雨


 夏休み、田舎の祖父母の家に遊びに行った。

 同じように遊びに来ていた従兄弟と、川遊びをして――おやつにスイカを食べて、昼寝をした。


 ささささささ……。

 ごろごろごろ……。


 ふるり…肌寒さを覚えて目を覚ませば、同やら夕立の真っ最中であるらしかった。

 自分で用意した覚えはないが、祖母がかけておいてくれたのだろうタオルケットを肩まで引っ張り上げて寝返りをうつ。

 まだ半分眠ったままだったのかもしれない。

 それに気付くには、しばらくかかった――。

 一番端で眠っていたので、従兄弟たちは背中側で寝息を立てていた。

 雨に冷やされた風の吹きこんでくるのは足元側の縁側からで、襖や障子を開け放ったままの午後の時間帯――顔を向けた側には、同じように畳敷きの隣りの部屋が見えているはずなのに……。


 黒い影が、横たわっていた。


 足元の方まで確認したわけではないが、影はおとなの背丈ほどに長く――ほとんど、寄り添っているように思われた。

 数年前まで、母が幼い弟を寝かしつけていたのだが……ちょうど、そんな感じだ。


 ささささささ……。

 ごろごろごろ……。


 誰だろう?……と、思った。

 祖父母でも両親でも叔父叔母でもないことだけは、わかっていた。

 顔も髪型も着ているものもわからない――ただ、ぼやぼやとした黒い人型だった。

 不思議に思いはしたが、怖いとは思わなかったのは……やはり、寝ぼけていたのだ。

「誰?」

 でも、声はしっかりと出た。

「あんた、誰?」

 繰り返し問うと。


 ぱちり……。


 真っ黒な中に、突然、ふたつの目が開いた。

 確かに、視線がかち合った――はっきりと認識するや、瞬き一回の間に影はすっかり消えていて……。


 ささ…さ……。

 ころころろ……。


 遠ざかる雨と雷の音だけが残されていた。



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