第5話「青春サラブレッドは私だ」

「進化論をご存知ですか?」

「なんだ一ノ瀬」

「いやいやあなたが一ノ瀬でしょ」

「私は、一ノ瀬花林だ、しかし君もまた一ノ瀬だ」

「結婚したんですか?私たち」

「作婚を知らないのか?」

「作家同士の結婚の略ですか?」

「ん~、君、ネトゲをやらないのか?」

「ゲームはあまりしませんね」

「そうか、では知識を進ぜよう、ネトカノというものだ」

「ネトカノ?ネット彼女ですか?」

「ほう、飲み込みが早いな」

「つまり、私たちはネトカノ関係であると?」

「そうだな」

「いや先生、私も先生も同性ですよ!!」

「ネトカノとはアバター同士の恋と言ってもいい、つまりイケるのさ!!」

「なるほど、しかし私は同意しかねます」

「なぜだ」

「いや先生、恋人というのはですね、ええ・・・・いや・・・なんでしょうね」

「そうか君も恋は未経験か」

「先生もでしょ」

「なぜ決めつける?」

「先生にモテ要素ないですから」

「なな!早計甚だしいぞ!!これでも100もの学友を落としたというのに」

「いや、あからさまな嘘を付かないでください」

「嘘ではない、私はなミスコンに出たのさ!!」

「ミスコン?先生は男ですから、ミスターコンテストですか」

「そうだ、そしてそこで、ざっと100人の票を得たのさ!」

「まさか、先生はそこまでスタイル良くなくないのに」

「はっはっは、君は知らんのだな、この世には誰もが輝ける秘儀があると」

「なんですそれ」

「ハリウッドメイクさ、」

「なるほどお面をつけたと、」

「いやいやメイクだよ!!」

「その写真ありますか?」

「おおあるぞ」

「あ・・・・・」

「どうだ」

「悔しいですが、かっこいいです」

「だろ!これがハリウッドメイク、感服したか」

「まーほぼ全身加工ですね」

「いや、ほら目とか、鼻とかは素だぞ」

「まーよかったですね!」

「なんだ、その振り切ったような笑顔は」

「いえ、だって、もうほとんど、別人レベルのメイクですし」

「君、少しは気遣ってくれよ」

「すみません、つい先生の黒歴史を見て本音が」

「え、いや黒歴史ではないだろ、」

「そうですね!かっこいいですよ、この先生は!」

「最後の言葉は余計だ」

「でもメイクって怖いですね」

「なぜだ」

「だって先生でさえかっこよく見えてしまうんですよ」

「君、喧嘩売ってるだろ」

「まさか、これは技術革新を賛歌してるんですよ」

「そうか、しかし、君も恋愛経験ないとなると、どこか馴染み深いな」

「いえ、私はあえて、彼女を作らなかったのですよ」

「なぜだね」

「勉強する時間が減るからです」

「真面目か!!!」

「私は無知であることが耐えられないんです」

「それで青春を無下にしたのか、なんてやつだ」

「いえ、青春はしましたよ」

「がり勉に青春が出来るか?」

「出来ますよ、お母さんが夜食を持ってきてくれて、そこに手紙が挟んであって、ガンバレとその一言で、もう何度泣いたことか」

「もっと若者と戯れろよ」

「母も若いですよ」

「いや、え?うん、まぁいいよもう」

「なんですか煮え切りませんね」

「価値観が違いすぎて、もうお手上げだ」

「まー先生よりは青春したとは思います」

「いやいや絶対私のほうが青春したし」

「いえ私です!」

「いや俺だ!!」

「いやいや」

「いやいやいや」

「いやいやいやーーーーー」

「いやいやわたしですって」

「私だと言ってるだろ!!!」

「「私だ!」」

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