第5話 ミミン☆ウォーズ

 お城での慣れない使用人の仕事。

 ヤヌスお妃様の嫌味の連打。

 そして謎の男の夜中12時の尋問。


 不覚にも30分ほど寝過ごしてしまった。しかし、朝のお妃様の着替のお手伝いの時間には間に合った。


 「ミミン。なあに? そのボサボサ頭は? 元々汚い髪の毛をきちんととかさなかったら救いようがないじゃない。だから婚約破棄されるのよ」


 なんでも婚約破棄に結びつけるのはもう飽きました。

 私も強くなったものだ。


 「も、申し訳ありません……少し寝過ごしてしまい、慌てて手ぐしで整えたものですから」


 「勘違いしないで頂戴」


 「はい?」


 「私はむしろ、あなたが酷い姿でいてくれた方が私が引き立つから怒ってなんかいないわ」


 「……ありがとうございます」


 よくもまあそんなに嫌味が思いつくよね。


 「それに今日は婚約の儀があるから、皆さん華やかな姿でいらっしゃるでしょ? 汚らしくみすぼらしいミミンの姿を見た後なら、これから見る物すべてが、華やかさを更に感じる事が出来るわ」


 「恐れ入ります……」


 「ところで今日のドレスはどの色が良いかしら? 赤? ピンク? オレンジ?」


 「あ、赤がよろしいかと……」


 「何を言ってるの? もうすぐ、今日の日の為に特別にあしらえた純白のドレスが届くのよ」


 くだらない質問はほんとやめてくれないかな? 

 咄嗟に考えつく代物じゃなさそうだから、きっと昨日の夜にでも考えたんでしょ。

 よくもまあ朝から人に対して嫌がらせ発言を連呼出来るよね。


 コンコンコン……


 「どうぞ入ってらして――どうやら私の実家の使用人がドレスを持参したらしいわ」


 ガチャ


 「しつれいいたします」


 え?! 使用人? この女の子が?!

 どう見ても5歳くらいだよ?!

 しかも、こんな大きな箱持って……フラフラしてるよ?!


 「イソプ、ご苦労さま」


 「おじょうさま、ドレスをもってきました」


 私は思わず駆け寄り、箱を持ってあげようとする。


 「ダメだよ。私がもって来たんだから、よけいな事しないでよ。お金もらえなくなるじゃん」


 信じられない。

 こんな小さな子が持つ責任感じゃなくない?

 察するに、仕事をしないと賃金はないわよ! なんて、ヤヌスお妃様に言われたのかな……。

 

 「そうよ。やめなさいミミン。それにそのドレスは、婚約破棄されたあなたが触っていい代物じゃないわよ」


 「ヤヌスさま、この人はだれですか?」


 「この女は婚約破棄されたミミンよ。イソプ、箱を開けたらさっさと退室しなさい。いつも言ってるでしょ。余計な会話はするんじゃないわよ」


 「はい……ごめんなさい……」


 「ごめんなさいじゃないわ。申し訳ありませんヤヌスお嬢様でしょ?」


 「もうしりゃけありません……ヤヌスおじょうさま……」


 酷い……。

 言えてなくて噛んでるじゃん。

 城下町でもこんな小さな子が働いてる姿なんか見た事ない。

 仮にも次期国王のお妃様になる人間が、こんな小さな子を……信じられない。


 「ミミン。あなた、まるでこんな小さな子を……とでもいいたげな表情ね」


 「いえ、そんなことはないです。少し驚いただけです」


 「ちなみに、マーガレットお婆さんは3歳の時から働いているわよ」


 「え?」


 「我が家は代々、貧しい家から子供達を引き取って働かせてあげてるんだから、感謝こそされる事はあっても、軽蔑される事なんかないわよ。わかるかしら? ミミン」


 「はい……ち、ちなみに食事とか……は?」


 「そんな事、知らないわよ。残飯でもあげてるんじゃないのかしら?」


 服装はメイド服着てるからマシとはいえ、あの痩せ細った感じならまともに食べさせてもらってないか、栄養以上にこき使われてる気がした。


 「晴れの婚約の儀の日に、くだらない事聞かないで頂戴。運命なんだから仕方ないじゃない。あなたも婚約破棄される運命だったのかも知れないわね」


 こんな事が許される世の中でいいわけないよ。


 そうか。

 これは色々な意味での戦いなんだ。

 

 冤罪との……

 お妃様との……

 お金との……

 法は……よくわからないけど。

 

 そして運命との……。

 


 後書き

 スクール☆ウォーズ

1984年に放映された山下真司さん主演のテレビドラマ。

 

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