第2話 婚約破棄の証明書は必要?
えっ?!
嘘でしょ?
婚約した時は指輪を嵌めてもらっただけだよ。書面なんてもらわなかったよ?!
それなのに、泣き腫らして目元がパンパンな私に朝一番で『婚約破棄証明書』なんてものが届くの?
『ミミンとテリー皇太子との婚約を解消した事をここに証明する』
証明って何?
そんな事はわかってるよ。
私が直接テリー皇太子に言われたんだから。
わざわざこんな書面必要なの?
ご丁寧に王室の正印まで押してくれちゃってさ。
「…………」
うん……。
わかったよ。
この事実を受け入れるよ。
もしかしたら、私が前に進めるようにわざと送って来た最後の慈悲なの?
そんな訳ないよね。
◆◇◆◇◆◇◆◇
ありえない。
あれから、静かに暮らして来てたまには笑う事も出来る様になって来たのに、貴族の別の女性と婚約だなんてわざわざ手紙で知らせてくるなんて。
まだ一ヶ月しか経ってないのに。
しかも、派手な婚約の儀を行うなんて噂になってるよ?
私の時はそんなのやらなかったのに……。
そうか……私は平民だったからか……そう言う事なら辻褄も合うし納得せざるを得ないよね。
でも早すぎるよ。
もしかして、悲劇のヒーロー気取ってその女性に慰めてもらってる内に愛情が芽生えたのかな? どうでもいい。私には関係ない。
でも、追い打ち掛けなくても良くない?
よろしければ、婚約者つまりお妃様の身の回りのお世話係――使用人としてお城で暮らしても構わない……その時はこの手紙を城門の衛兵に渡して……なんて追伸いらないよ。
何を考えてるの?
確かに婚約した時にお針子の仕事場を辞めて、今はなんにもしてない――それどころか、城下町中に『皇太子と婚約したのにも関わらず他の男性と恋仲になった』なんて、噂されてる私を雇ってくれる所はないかも知れないけどさ。私の収入がなくなって我が家の生活は厳しいけどさ。それを知っての同情? 晒し上げ? 足元見られてる?
それにお妃様だって嫌なんじゃないの? ちゃんと了承してるの? 本来ならば元婚約者の私は、目障りな存在。国外追放にしたいくらいなんじゃないの?
ひどいよ。ひど過ぎるしあんまりだよ。
人間の気持ちをなんだと思ってるのかな? それが名君主と言われている王様の息子……テリー皇太子のやり方なの?
いいよ。
わかった。
即決するよ。
無様な姿を見せつけながら、使用人としてお城に住もうじゃない。
よくよく考えて見たらおかしいよ。
なんか陰謀でも――あ……そうか。
私、ハメられた?
何か裏があるんじゃない?
お城で働けば私の疑問の答えが見つかるかも知れない。
いや違うよ。それが目的じゃない。父がいない我が家は働いていない母と私だけ。父が残した借金もある。お金がない。とにかく働かなくてはいけない。
我慢しなきゃ。
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