第33話 珍テイマー、ヤブ
ストーンヒルの二体は睨み合い、様子を伺っている。
先に動いたのはダークグレーのストーンヒル。
ズルズルとライトグレーへゆっくりと近づいていく。
ライトグレーは少し下がった後に前へと前進を始め、徐々にスピードを上げ始めた。これは良い勢いだ。
二体が衝突すると衝撃で体が波打った。
小さな体で頑張っているようだ。
攻めたのはダーググレー。
体を起こすとライトグレーへと覆い被りに行った。
それを体を曲げることで避けたライトグレー。
隙のできた脇を攻撃する。
ダーググレーの脇が石化した。
少し動きづらそうに下がると後ろの尻尾に当たるところを脇に当てる。すると、石化が治っていった。
「せんせー。これは……」
「そうですね。やはり石化を治す器官があるようですね」
だけど、それを果たしてどうやって人間に使うか。
それが問題となってくる。
ストーンヒル同士の戦いは激化していた。
どちらかが石化させても治し、こう着状態が続いていた。
そんな中、ライトグレーは後ろに下がり始めた。
ダークグレーがそれをチャンスと見たのか、凄い勢いで追ってくる。ライトグレー、大丈夫なのか?
一体どうした?
ライトグレーが止まった。
迫るダーググレー。
起き上がり、大木かぶさる。
やられる。
そう思ったとき、何かが飛来した。
ビタンッとダークグレーの上に覆い被さる少し大きなライトグレーのストーンヒル。
ダークグレーは瞬く間に石化した。
なんと戦いの結末は第三者の介入という反則極まりない結末を迎えた。大きなライトグレーは先ほどまで戦っていたストーンヒルへ寄り添うとツンツンし始めた。
夫婦だろうか。仲がいいのは良いことだ。そこに小さなストーンヒルが三体合流してツンツンしている。家族だったのか。
なんか可愛いなぁと思い眺めていたが、ホッコリしている場合ではない。どうやって人体を元へ戻すか。それが課題となってくる。
この子達が協力してくれればなぁ。言葉が通じないであろうストーンヒルをどう引き込むか。
「ムーラン、あの子達を引き込めるか?」
ずっと肩に乗って様子を見ていたムーランへと聞いてみる。すると体を揺すり、僕の体を伝ってそのストーンヒル家族の前へと降り立った。
最初は物凄い警戒し、戦闘態勢になったストーンヒル。ただ、対峙しながらムーランが何やら体を動かして意思疎通を取っている。
ストーンヒルも何か話し合っているようだ。
話がまとまったのだろうか、体を揺らしてムーランへと答えを伝えている。
それをムーランが僕へと伝えようとする。
口を空けたり開いたりしながら先端の足を口元へ持ってきている。その動作はもしかして、食糧を確保してくれるならいいということかな?
「石を与えるなら、いいってことかな?」
ムーランは体を揺らして肯定の意思を示しているようだ。石の供給ならどうにかなるのではないだろうか。ただ、気になることが。
「生き物が石化したものじゃなくてもいいの?」
ムーランはストーンヒルに聞くと体を揺らした。
別に大丈夫ってことかな。
それならどうにかなるよ。
この森には確かに石はないかもしれないね。
ただ、街の方には結構あるからそれを拾って与えよう。
森でしか生きられないのだろうか?
「ヤコブさん、ストーンヒルってどうやって討伐しているんですか?」
「うーん。切っても再生するからなぁ、炎魔法で焼き尽くすか。水に弱いから上からぶっかけたりかなぁ」
水に弱いのか。だから、森の木に隠れながら生活しているのかな。治癒院の中庭だったら生活できるよね。
「貴重な情報を有難う御座います。この子達を連れていくことにします」
「おぉ。流石は珍テイマー、ヤブだな」
「なんですか? その変な呼び名は?」
「テイマーでも、ポイズンスパイダーをテイムするやつなんていねぇんだ。だから、テイマーの間では珍しい魔物をテイムするって意味で呼ばれてるらしいぜ?」
なんか不本意なんだが。珍テイマーなんてヘンチクリンな名前で呼ばないでほしいんだけど。でも、ストーンヒルをテイムしたとなるとまた呼ばれるんだろうな。
まぁ、患者さんを治すためだ。僕がどう呼ばれても構わないさ。
「じゃあ、ついてきてくれるかな? よろしくね?」
ムーランはピョンと肩へ乗った。
ストーンヒル達へと手を差し伸べる。
腕を伝って上り、ムーランの下へと潜りこんだ。
そこが体ポジションになるんだ。片方にだけ乗られるとなんかバランスが……。まぁ、いいか。
そのまま野営しているところへと向かう。
ゴリミヤの他の人達が怪訝な顔でこちらをみる。
「あんた、また変なの連れてきたの?」
ミナさんからの鋭い突っ込み。何と言えばいいのやら。仕方がないことだけど。
「この子達は治療に必要となるんです。治癒院の仲間になりました」
「ふーん」
その日はもう暗くなるところだったので、野営をして次の日に帰ることとなったのであった。
「せんせーは、どうやって人間の石化を、どう治療する気なんだ?」
「うーん。治癒院に来た方はこの子たちに治してもらえばいいと思うんです」
「だけどよぉ。皆が来られるわけじゃねぇだろう?」
たしかにそうなのだ。どうにか薬のようなものを作ることができれば……。
そこで、メルさんの言っていた言葉を思い出した。
軟膏か。作ってみる価値はあるね。
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