第25話 魔法の練習
この屋敷に移り住んで一週間程経った。
屋敷内はすっかり綺麗になり、庭や畑も次第に以前の姿を取り戻しつつあった。実質二人で良くやったものである。少しずつ生活にも慣れ自分の時間も増えてくる。
今日はルイスが王都へと出かけており、留守番の私は空いた時間を利用して庭の端で魔法の練習をしていた。水や炎を操れないとこの世界では不便だ!今の私は魔法を補助する道具を使いながら生活しているけど……いずれこの道具無しに戻りたい。
「調子はどうですか?」
フローティアが様子を見に来た。
「大きな欠片が無くなって魔力は流れ易くなったんだけど……今度は強弱の調節が難しくて。油断すると想像より強火に成っちゃう」
「まぁ。強火すぎると全てが煤になってしまいますから困りますね」
「そうなんだよ……いざという時に強火に成ったら余計危ないし」
私はぼやきながら魔法の練習を続けた。この練習は子供の時に一度して以来で、大人に成ってからもするとは思ってもみなかった……
「気を付けてくださいね?うっかり強火でまた結晶化しない様に。私、本を読んでいますので何かあったら言ってください」
「うん!わかった。気を付けるよ~」
そう言ってフローは家の中へと消えて行った。
「メル、魔法使えるようになりたいの~?」
「うん。成りたいよ~わたしここに来る前は魔法が大好きだったんだよ?」
「メルの魔力はおいしぃ~!! わらわ、メルの魔力好き~!! また使える~!!」
ムゥーナの言っている意味は良く分からないけど、この子なりに励ましてくれているのだろう。私は笑顔でムゥーナにお礼を言った。
練習に戻りどれくらい時間が経ったのだろう。
視界の端で何かが動くのが見えた。コクヨウかなとも思ったけど、別方向からコクヨウの満足そうな鳴き声が聞こえてくる。
その正体を捉えようと目を細めた。木の影に隠れて誰かがこちらを見ている。
「ムゥーナ、危ないからここに居てね?」
私はじわじわと木の後ろに隠れる人物の元へと近づく。誰だろう?こんな所に……
お客さん? ためしに話しかけてみた。
「あの~……どちら様ですか?」
「―――!」
私の声に驚いた人影は私に向けて何か投げた。
「メル!まほう!!つかう~!!」
ムゥーナからの注意と同時に私も反射的に魔法を放っていた。
癖とは怖いものである。
つい数日までは不発だったけど、今の私は違う。
力の調節が出来ない私は……飛んで来た物に石つぶてを当てて跳ね返そうとしたつもりだったのに、そこそこ大きな岩を浮かせて投げていた。
「「あっ……」」
これにはお互いに驚いてしまった。
飛来物を打ち落した岩は更に木陰の人物の元へと跳んでいく。
「ごめんなさい!!逃げてください!!」
派手な音を立てて、岩は地面にめり込むのであった。
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