第7話 イケメン騎士は怒らせると怖い
医務室からフローの部屋に向かおうとしたら、
私とフローは騎士ルイスの隣を歩きながら、いつもよりざわめく城内を進む。
どうやら彼はフローの姿が見えていないようだ……
第3騎士団のルイスか~。私、苦手なんだよなぁ~。
第3騎士団は聖女関連の仕事を請け負う。なので私はルイスの顔を知っていた。彼は私より4つ年上で、異例の若さで出世した副団長だ。
先日、彼からはダークドラゴンを撃退した時に、こっぴどく叱られた。優しい顔して怖い。
はぁ……もう感情がめちゃくちゃだよ。
思わずため息を吐いた。気持ちの整理をさせて欲しい……。
歩きながらも城内の人々の様子を観察する。皆、慌ただしく右往左往している。誰が聖女を殺したんだろう……キョロキョロと見渡していたら、突然ルイスに声を掛けられた。
「フローティア嬢は聖女様をものすごくお慕いしていたのですね? 冷静沈着なあなたが取り乱す姿を初めて見ました」
―――ひぃっ!びっくりした~。
フローは、そんな私を見て『答えてください』と言わんばかりに顔を覗いてくる。
「ええ……メルティアーナ様とは、初等学校からの付き合いでしたので。気が動転してしまいました。……誰があんなひどい事を……」
「ほう……それは初耳だ。聖女様とはそんなに長いお付き合いだったのですね?
ルイスは目を細めて私を見つめた。その目、本当に驚いていますか??
―――いや。私、何かマズイこと言った??
フローを見ると、彼女は渋い顔をして首を横に振っている。個人情報を言うなって事??
言われてみれば、フローは周囲に自身の事を話していないかも……これ以上話すとボロが出そうで怖いっ。それに面倒だ、彼から情報を聞き出そう。
「今、城内はどのような状況になっているのですか?」
「医師の検死も終わり、聖女様のご遺体は棺に納められ、大聖堂に安置されております。3大臣より犯人捜しの令が下り、昨夜から今朝にかけて城に居た人物は聴取されています。貴女は倒れてしまったので目覚め次第とのことでした」
なるほど、私もこれから聴取が有るのか。この聴取で犯人が見つかれば一番いいのだけど……ネグリジェ姿って事は、フローも知ってる相手だったのかな?
などと考え事をして油断していた。
「貴女は……昨晩、出かけていたのですか?」
「―――!は、はい。町はずれの魔法店に。魔法を勉強に行っていました……!!」
言ってからハッとして、思わず手で口を塞いだ。私は、何を素直に答えているんだ!?
彼をチラリと見上げると……氷の様に冷たい視線で私を見ている。思わず背筋がブルッと震えた。
ルイス、君は私を犯人だと疑っていないかい?? いや、疑っている!!
私は助けを求めるようにフローを見ると……額に手を当てて、頭が痛そうなポーズをしていた。
驚いて止まってしまった思考が徐々に動き出す。きっと、先に聴取された侍女達の間で話しが出たのだろう。『今朝、
ああっ……それに使用人は原則出かけるときは許可を取らないといけない。
アリバイはすぐに証明できず、規律を破ったのもバレた。つまり私は自ら墓穴を掘った。あわあわと狼狽えていると更に質問が飛んできた。
「町はずれの魔法店とは……以前、王宮魔術師だった魔女の店ですか?」
「ハイ……ソウデス……ドロシーさんノ店デス」
「城を黙って抜け出すのは感心しませんね」
「ハイ、申シ訳ゴザイマセン……」
冷や汗がだらだらと流れてくる。もう、嘘はつけない!余計に疑われたら堪らない!! 行動については正直に話そう……そう誓いながらも、実際は動揺で目が活きの良い魚の様に泳ぐ。そんな私を
「貴女が戻ってきたのは、いつですか?」
「大聖堂に駆け込む少し前です……あの、これ尋問みたいじゃないですか?」
そうだ。私はこれから聴取されるのに、何故ルイス君に尋問されるんだ!
私が彼に問いかけると、このイケメンはにっこりと笑って答えた。
「いえ、聴取ですよ? 言いましたよね? 貴女は目覚め次第って」
「え? 聴取? なぜ騎士の貴方が?」
彼は歩みを止めた。
「今回、僕達第3騎士団が犯人探しに名乗りを上げました。私達の聖女様をあんな
彼は拳を強く握り締め、悔しそうに答える。『私達の聖女様』って彼に言われると、私は彼等に嫌われて無かったんだと少し安心してしまった。そんな懸命に探してくれて嬉しいよ……。
ルイスは私を見ると満面の笑みで告げた。
「―――と言う事で、フローティア嬢。貴女は黒に近いグレーです。今朝不審な行動をしていた人物には見張りを付けるよう指示が出ていますので、僕が貴女の見張りを担当させて貰います。しばしの間、仲良くしてくださいね?」
ひぃぃぃぃぃ! なんですって!?
私は助けを求めるようにフローを見るが、『こっちを見ないでください!不審がられます!!』と言わんばかりに首を横に振られてしまった。
な、仲良くできるかなぁ?
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